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細胞操作に“第3の手”,大阪大
フェムト秒レーザーで細胞融合を効率化
[2007/04/13]


 フェムト秒レーザーを使って細胞を操作し,人工授精や細胞融合の効率を高めることに,大阪大学大学院工学研究科特任助教授の王勇氏らの研究グループが成功した。
 これまで顕微鏡下で細胞を直接取り扱う手法として,(1)機械式マニピュレータと,(2)レーザートラッピング技術が利用されてきた。(1)は数mm〜数百μm,(2)は数μm,の大きさの細胞の操作を得意とする。しかし,「それぞれ,細胞を操作する“大きな手”(機械式マニピュレータ),“小さな手”(レーザートラッピング)として利用されているが,この間を埋める中くらいの大きさの手がない。そのため,生殖細胞や細胞壁を持つ植物細胞などの細胞操作が難しかった」(王氏)。つまり,100μm〜10μmの大きさの細胞操作を得意とする技術が求められていた。
 そこで,“第3の手”としてフェムト秒レーザー衝撃波を用いた細胞操作技術を確立,“3本の手”を持つレーザー顕微鏡システムを構築した。細胞の種類や大きさに応じて“手”を使い分けることで,選択性の高い細胞分取が可能になる。さらに,分取後の細胞を融合したり,配列したりすることで,人工授精や細胞チップ開発への応用が図れる。すでに研究グループでは,「1チップ細胞融合システム」や「細胞配列システム」の開発を進め,チップ上で細胞の分取や融合が効率的に行えることを確認した。

空白地帯を埋めるフェムト秒レーザー
 今回,構築したレーザー顕微鏡システムは,(a)マイクロインジェクションシステム,(b)細胞操作システム,(c)レーザーカッターシステムから構成されている。(a)は試料の注入・抽出,(b)は細胞の移動や分取,(c)は細胞の加工を担当する。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,開発した。
 フェムト秒レーザーによる細胞操作技術は,(b)の過程を効率化する。「フェムト秒レーザーにより,マニピュレータとレーザートラッピングの空白地帯を埋めることができる。その結果,取り扱える細胞の幅が広がる。チップ上に流路を作り細胞を流せば,細胞の大きさに応じた最適な力で,顕微鏡観察しながら高精度で細胞を操作できる」(王氏)と言う。また,光非接触のため,細胞の光学特性や形状,性質に制限されない,細胞へのダメージが少ないという特徴がある。
 具体的なモジュールとしては,DMD(Digital Micro - mirror Device)等によるレーザー多点照射システム(図1)を構築した。電動ミラーアレイを介して,細胞を取り囲むようにレーザー光を照射すると,誘起された衝撃波が均等に細胞の周囲に発生する。衝撃波の数や強さを調整することで,細胞の捕捉,移動が可能になる。

図1:レーザー多点照射システム
レーザー多点照射システム

レーザーを使い分けて細胞のペアリングを制御
 “第3の手”が加わることで,高等植物の人工授精や大きさの異なる異種細胞間での細胞融合などの効率化が期待できる。「高等植物の配偶子(精細胞と卵細胞)は,組織深くに囲まれた状態で存在するため,単離することが困難だった。また,従来の細胞融合法は,融合させる細胞のペアリングを偶然に頼っていて,成功率が低かった」(王氏)と指摘する。そのため,これまで特定の細胞を選択し,融合させることは,職人的な技術を必要とした。
 そこで研究グループでは,フェムト秒レーザーを使って精細胞,卵細胞を効率的に単離できる手法を確立,ソバの花粉および子房を用いて検証した。具体的には花粉,子房を前処理した後,高出力フェムト秒チタンサファイアレーザーの照射を繰り返すことで単離した。その結果,従来の酵素処理による単離と比べ,成功率の向上,作業時間の短縮が可能になることを確認した(表1)。細胞を非破壊で取り出すことができ,「酵素処理すると失われることが多い細胞の生理活性も,(フェムト秒レーザーによる方法では)維持される」(王氏)と言う。
 また,「1チップ細胞融合システム」を用いて,単離した精細胞と卵細胞の人工授精(細胞融合)を試みた。その結果,チップ上で融合させる精細胞と卵細胞を選択的に捕捉し,電気パルスで融合することに成功した。現在,人工授精した細胞の培養を進めていると言う。研究グループでは,この他にも,マウス繊維芽細胞(NIH3T3細胞)の細胞融合や葉緑体の導入による植物カルス細胞の形質転換などにも成功している。
 「細胞別にレーザーを使い分け,(細胞融合のボトルネックだった)ペアリングを制御することで,細胞融合の成功率を高められる。今後,植物の人工授精だけでなく,再生医療分野や創薬分野への応用を視野に,実用化を目指す」(王氏)方針である。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


表1:精細胞,卵細胞の単離の成功率と操作時間
精細胞,卵細胞の単離の成功率と操作時間




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