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独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
長浜バイオ大学バイオサイエンス学部


長浜バイオ大学からの提案
一粒子検出による感染症診断機器の開発に関する意見交換や
共同研究の提案



現在,空港検疫所では新型インフルエンザウイルスなどの新興・再興感染症(注1)の拡散を水際で防ぐための診断手法が求められています。そこで,長浜バイオ大学バイオサイエンス学部は,培養法やPCR法(注2)と同程度の高感度診断を数分で行なえる新しい病原体検出法を開発しました。蛍光分子(注3)の溶液内での動きを非常に細いレーザー光で観察することにより,蛍光物質を吸着させたウイルスやバクテリア・原虫のような病原性粒子を一粒子レベルで計数できる技術です。防疫対策のほかバイオテロ対策や,感染症治療薬の開発のためのスクリーニング用途などへの利用が期待されます。本技術を用いた検査装置の実用化を加速させるため,医療機器メーカーや専門研究機関との意見交換,共同開発を提案します。

(注1) 最近20年間程度に新たに認識された,あるいは再流行し出した感染症に対する総称のこと。病原体としては,エイズやエボラ出血熱などがある。例えば,2003年頃に重症急性呼吸器症候群(SARS)は突発的かつ一過的に流行し,死亡率の高さから大きな社会不安をもたらした。
(注2) Polymerase Chain Reactionの略。ゲノムDNAなどをテンプレートにして,増幅したい領域の両端に相補的なプライマー(注4)と耐熱性DNAポリメラーゼ(注5)を用いてサイクル反応を行うことにより,目的とするDNA領域を増幅する方法。
(注3) 光(励起光)を分子に照射すると分子が励起光より長波長の光を放出することがある。この現象を蛍光と呼び,蛍光を出す分子のことを蛍光分子という。
(注4) DNAポリメラーゼがDNA を合成する際に反応の開始点と終了点を決める役割をもつ短い核酸の断片のこと。
(注5) 1本鎖の核酸を鋳型としてそれに相補的な塩基配列を持つDNA鎖を合成する酵素の総称。


1. 技術ニーズ
 現在,発展途上国を中心に感染症が蔓延し,温暖化に伴う気候変動やグローバル化した経済活動が大規模な感染症の拡大をもたらしていると指摘されています。感染症の拡大を抑えるためには,素早い公衆衛生上の対策を講じることが不可欠ですが,現行の簡易検査法(免疫クロマト法(注6))では検出感度と精度が低すぎるためウイルス感染直後(ウイルス量の少ない時期)の診断が難しいことや,定量性に乏しいという問題がありました。また免疫クロマト法は分析結果を得るまでに約30分かかることから,現場で直ぐにウイルス判定することが求められる検疫用途での利用の妨げとなっています。

(注6) 着色粒子で標識した抗体とウイルスが結合した抗原抗体複合体を含む試料を試験紙に吸い込ませ,その中を移動する際に直線状に固定された別の抗体に集中的に捕捉されることで現れる色付きのラインの有無によって定性分析する方法。


2.研究テーマ/技術成果
 今回開発した一粒子検出法は,蛍光相関分光法の応用研究から開発されました。蛍光相関分光法は,個々の分子の蛍光特性を一分子レベルで計測することにより,精度良く分子量変化を検出する分析技術です。共焦点光学系(注7)によりサブフェムトリットル(注8)領域に光を照射し,そこから得られる蛍光信号を高感度に検出します。この蛍光信号は熱ゆらぎ(ブラウン運動)による蛍光強度ゆらぎを持つことから,この微細な蛍光強度の変動を経時的に記録し蛍光分子の大きさと数に関する情報を得ることができます。蛍光相関分光法から派生した手法である一粒子検出法は,ウイルスのように直径100ナノメートル以上の粒子のみを測定対象とします。このような粒子は,溶液中の移動速度が一般の生体分子よりもさらに遅いため,表面に吸着させた蛍光物質由来のシグナルが大きく鈍い特有の変動を示します。これを計数することで遊離蛍光物質(検出試薬)と蛍光物質の吸着したウイルス粒子の区別を容易に行うことができ,分離濃縮過程なしにウイルスの高感度迅速検出を行なうことができます。蛍光相関分光法は高精度な分析技術であるため高価な機器を必要としますが,比較的シンプルな原理である一粒子検出法に特化した機器を開発することで,実用的なレベルまでコストを下げることが可能であると考えています。

(注7) 結像する位置(受光素子の前)にピンホールを置くことで対物レンズの合焦位置以外からの光を排除できる光学系のこと。
(注8) フェムトリットル=10のマイナス15乗。


3.特徴

1. ウイルス検出感度は現行の簡易検査手法(免疫クロマト法)に比べて100倍高く,(検出までに数日から一週間掛かる)精密検査手法(培養法,PCR法)と同等の検出精度。
2. 診断時間は約5分で,免疫クロマト法より6倍早い。
3. 検出プロセスが簡便で人的ミスが少ない。
・ 試料溶液に光を照射するだけで目的物を検知可能。分離・濃縮操作不要。
・ 病原体に特異的に吸着する蛍光試薬を加えるだけで測定可能。前処理不要。
・ 病原体一粒子を検出可能。PCR法などで行われる増幅反応不要。

 これらの特徴から以下の用途で本技術を提供することができます。

○ 防疫
 空港検疫所などで海外からの感染を水際で防止するために,旅行者の喉や鼻腔の粘膜試料,場合によっては唾液などからその場で感染の有無を判定することができます。本提案技術は,防疫・公衆衛生機関に新型インフルエンザの拡大阻止に対する強力なツールを提供します。また,国内の家禽への高病原性トリインフルエンザウイルスの侵入を迅速に検知確定するための装置として普及すれば,多大な経済的損失を未然に防ぐことも可能となります。

○ 研究支援
 感染症治療薬の開発のためのスクリーニング系に適用可能です。本提案技術は,高感度・迅速性・定量性について優位性を持っています。創薬研究では開発の迅速性と精度の高い測定法の確保が求められることから,感度・定量性を高めた高性能型機器を提供します。

○ 臨床検査
 高感度であることから検体は微量で済み,採取が容易になり,患者の負担を低減させることができます。迅速測定であることから短時間での多検体処理が可能です。病原体粒子を増幅なしに検出できるという特徴から,将来的には培養が困難で直接検出と定量が必要とされている病原体(例えば,B型肝炎ウイルス,C型肝炎ウイルス,ノロウイルスなど)に対する適用が可能です。

また,ウイルス一粒子検出技術のほかにも,蛍光相関分光法の応用研究として食中毒原因物質の特定法や遺伝子定量技術の開発を同時に行っており,幅広い応用展開を考えています。


4.実用化に向けた課題
 性能を維持しつつ,検出装置の性能とコストを両立させるために,個々の部品の調整をはかりながら,実用的な検出装置を試作する必要があります。病原性インフルエンザウイルスと同時に,さまざまな病原因子の検査試薬を開発し,この検出装置の汎用性を証明することを目指しています。

5.今回の提案内容
 一粒子検出法によるウイルス検出装置の開発,そのほか蛍光相関分光法の応用研究に関して企業・研究機関と意見交換を行い,共同開発することを提案します。

6.論文/特許実績
 特許出願5件

7.問い合わせ先
長谷川 慎(長浜バイオ大学バイオサイエンス学部 講師)
TEL: 0749−64−8100   FAX:0749−64−8138
E-mail:メールアドレス
研究者HP: http://www.nagahama-i-bio.ac.jp/education/cat38/cat78/


【ニュースリリース】
  ・空港検疫,バイオテロ対策向け高感度病原体検出法を開発,
5分で感染直後の微量ウイルス等の有無を診断  [2008年10月9日]




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