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九州大学大学院工学研究院応用化学部門


九州大学大学院工学研究院応用化学部門からの提案
高効率水蒸気電解による水素製造の提案



 水素エネルギーは,エネルギー消費による排出物が水のみで,二酸化炭素などの環境負荷物質を発生させることのない次世代のクリーンエネルギーとして注目されています。自動車用燃料電池の期待も相まって,水素の製造・輸送・貯蔵の各技術開発が急がれていますが,未だ安全性と効率(コスト)に難があるため大規模な商業レベルでの普及段階に至っていません。
 そこで,九州大学大学院工学研究院応用化学部門では,独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として,高効率の水蒸気電解水素製造装置を実現するためのプロトン伝導性電解質および高活性電極材料を開発しました。これまでの伝導率の高い伝導体(BaCeO3等)では二酸化炭素や水蒸気との反応で性能が劣化することや,従来の金属電極(ニッケル等)は電解質によっては活性が上がらないために低過電圧下で作動しないことが課題となっていました。今回開発した技術は装置全体に負荷の掛からない600℃程度の作動温度で稼働し,電解効率90%以上の高効率水素製造を可能にします。更に,現在開発中の電解質の薄膜化技術と組み合わせることで,より高効率の水蒸気電解水素製造装置(電解効率93%以上)の実現を目指しています。この高効率水蒸気電解による水素製造の実用化の加速に向けた情報交換や,共同開発を提案します。


1. 技術ニーズ
 現在,地球の温暖化現象は人類にとって最も大きな脅威となっています。これを阻止するためには,エネルギー創出から消費までのプロセスで二酸化炭素を大量に発生する化石燃料エネルギーからの脱皮が不可欠です。代替エネルギーの有力な候補の一つとして水素エネルギーシステムの確立が挙げられます。自然エネルギーや原子力エネルギーにより得られる電気エネルギーを水素という形で化学エネルギーとして蓄え,必要に応じて電気や熱に戻すことにより,二酸化炭素などの環境負荷物質の発生を伴わないエネルギーシステムを構築することが可能となります。現在,水素の製造・輸送・貯蔵に関する技術開発が行われていますが,安全性や効率(コスト)に難があるため大規模な商業レベルでの普及段階に至っていません。水蒸気電解は水素エネルギーシステムにおいて,燃料電池(水素から電気をつくる)と対をなす,水を電気的に分解することで水素をつくる技術ですが,電解質として主に使用する伝導体(BaCeO3等)は二酸化炭素や水蒸気と反応分解し性能が劣化すること,また旧来の金属電極は電解質によっては低活性であるため,高効率を得るために必要な低過電圧下での作動ができないといった課題があります。安全,コスト(高効率)の両面をクリアする水素製造の逸早い実用化が求められています。

2.研究テーマ/技術成果
図1:プロトン伝導体を用いた水蒸気電解の原理図
図1:プロトン伝導体を用いた水蒸気電解の原理図

 本九州大学大学院工学研究院応用化学部門では,イオン伝導性が高いプロトン伝導性酸化物を用いた水素製造について検討を行いました。水蒸気電解装置全体に負荷の掛からない中温度域(600℃以下の作動温度)で電解効率90%以上(電解電圧1.2V以上)を達成できる電極の探索試験を行った結果,以下の開発に成功しました。

(1) 導電率5×10-3 S/cm-1を有する,化学的に安定したプロトン伝導体。
(2)電極過電圧が0.3 Vの電極(電流密度0.2 A/cm2におけるアノードとカソードの合計)

 更に,現在本部門で開発している電解質の薄膜化技術を応用し,厚さ約10ミクロンの薄膜電解質を組み入れることで電解効率93%以上(電解電圧1.4 V以上)の水素製造を行うことを目指しています。

3.技術の特徴
 今回,開発した電解質材料,および電極材料は以下のような特徴を持ちます。
<電解質>
開発したプロトン伝導体はSrZr0.5Ce0.4Y0.1O3-aという組成をもち,化学的安定性の高いSrZr0.9Y0.1O3-aとプロトン伝導性の高いSrCe0.9Y0.1O3-aを組み合わせた組成材料です。これまで報告されてきた多くのプロトン伝導体は,特に伝導性の高いものでは二酸化炭素や水蒸気との反応により劣化しますが,本材料は600℃の100%水蒸気および100%CO2において分解を生じません。
<電極>
電解質にプロトン伝導体を用いた場合,水の分解はアノード(陽極)で起こり,カソード(陰極)において水素が発生します。水を分解するアノードには,これまで用いられてきた金属電極に変えて,Sm0.5Sr0.5CoO3という組成の酸化物電極が高活性であることを見いだしました。また,水素発生極であるカソードにはニッケル電極と電解質の間にセレート系のプロトン伝導体の薄い層を挿入する構造を採用しました。これらにより,600℃,0.2 A/cm2の条件で0.3Vという低過電圧での作動に成功しました。

4.実用化に向けた課題
(1) 電解効率93%以上(電解電圧1.4 V以上)の実現に向けた厚さ10ミクロン程度電解質での実証
(2) 電解質の薄膜化の信頼性確保
(3) セル構造の最適化

5.今回の提案内容

 本技術の優位性はそのエネルギー効率の高さにあります。電解効率93%(電解電圧1.4 V以上)というエネルギー効率を達成可能にする技術として期待されます。実証試験に向けた意見交換や共同開発を行うパートナー先企業を募集します。

6.論文/特許実績
<学術論文>
1) T. Sakai, H. Matsumoto, T. Kudo, R. Yamamoto, E. Niwa, S. Okada, S. Hashimoto, K. Sasaki, T. Ishihara, "High performance of electroless-plated platinum electrode for electrochemical hydrogen pumps using strontium- zirconate-based proton conductors", accepted to Electrochimica Acta
2) Takaaki Sakai, Shotaro Matsushita, Hiroshige Matsumoto, Sachio Okada, Shinichi Hashimoto, Tatsumi Ishihara, "Intermediate-temperature steam electrolysis using strontium zirconate based protonic conductors", Submitted to International Journal of Hydrogen Energy
3) 松本 広重・石原 達己,「セリア系プロトン伝導性材料」,セラミックス 第42巻 11月号(2007年)pp.877-882
<学会発表>
1) ○松下 正太郎・酒井 孝明・岡田 祥夫・松本 広重・石原 達己,「ストロンチウムジルコネート系プロトン導電体を用いた中温水蒸気電解における電極材の検討」,日本科学会,第88春季年会,3L6-40(2008年3月,東京)
2) ○松下 正太郎, 酒井 孝明, 岡田 祥夫, 松本 広重, 石原 達己,「ジルコネート系プロトン伝導体を用いた水蒸気電解」,第45回化学関連支部合同九州大会,5_4.084(2008年7月,北九州,予定)
3) ○酒井孝明, 松下正太郎, 松本広重, 石原達己,「ペロブスカイト型プロトン導電性酸化物を用いた中温水蒸気電解」,第21回セラミックス協会秋季シンポジウム(2008年9月,北九州,予定)
<特許>
1) 特願2008-056268,「電気化学セル」,特許権者(出願人):松本広重,発明者:松本広重,出願年月日:平成20年3月6日
2) 特願2008-116199,「電気化学セル及びその製造方法」,特許権者(出願人):松本広重,発明者:松本広重出願年月日:平成20年4月25日

7.問い合わせ先
  九州大学大学院工学研究院 准教授: 松本 広重
  TEL:092-802-2869  FAX:092-802-2871
E-mail:メールアドレス







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