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2008.11.11
 
佐賀大学理工学部機能物質化学科

「都市鉱山」から金,銀,白金,パラジウムの高価な貴金属を
選択的に回収する技術を開発
‐ 古紙と果物廃棄物から作る原価のかからない貴金属吸着剤を創作 ‐


【新規発表事項】
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として,佐賀大学理工学部 機能物質化学科の川喜田英孝氏は,原価のほとんどかからないバイオマス廃棄物から吸着剤を調製し,電気・電子部品を塩酸で溶出させた貴金属を含む産業廃液から金,銀,白金,パラジウムなどの高価な貴金属を一度のプロセスで選択的に回収できる技術を開発しました。古紙に含まれるセルロース(注1)とリグニン(注2)にアミノ化反応を施し調整した吸着剤と,柿やレモンなどの果物廃棄物に含まれるポリフェノール(注3)を硫酸で架橋して得た吸着剤の二つの吸着剤を開発し,前処理で取り出す銀の他に,金,白金,パラジウム,ロジウム等の貴金属を選択的に抽出することに成功しました。これまでに,産業廃棄物からの貴金属の回収には活性炭(注4)や高分子樹脂(注5)などの吸着剤が利用されてきましたが,吸着容量が小さくコストが掛かることと,有害な有機溶媒の廃水処理や樹脂焼却によるダイオキシン類の発生が課題となっていました。今回開発した吸着剤は廃棄物を原料とし,高価な金属を選択的に抽出できるため,従来の吸着剤の金属回収方法に比べ2〜10倍安価な回収プロセスを構築できます。また有害物質を使用することも排出することもない,環境に易しい技術です。

古紙から調整した吸着
 
果物廃棄物から調製した吸着剤
 図1.古紙から調整した吸着剤(左図)と果物廃棄物から調製した吸着剤(右図)


(注1) 植物細胞の細胞壁および繊維の主成分。天然の植物の約1/3を占め,地球上で最も多く存在する炭水化物とされる。分子式は,(C6H10O5)n 。
(注2) 木質などの植物に含有するフェノールやアルキルを含む嵩高い高分子。溶媒への溶解性が低く,剛直な分子として知られている。
(注3) 水酸基のベンゼン環をもつフェノール性の分子が高分子化した分子のこと。
(注4) 表面に1ナノメートル(100万分の1ミリメートル)から1マイクロメートル( 千分の1ミリメートル)という微小穴が無数にある石炭や,ヤシ殻などの炭素物質のこと。表面積が極めて大きいため,有機物質の吸着力に優れているとされる。金属の吸着性は高いが,低選択性が問題となっている。
(注5) ジビニルベンゼンやアクリル酸を重合した高分子を指す。樹脂内に金属と配位する官能基を導入して使用する。金属に対しては,高い吸着性能を発現するが,吸着した金属と樹脂を剥離,溶融することが容易ではないために樹脂を焼却することで貴金属を抽出しなければならないことからタールやコーク等の後処理が面倒な焼却物が残るという課題がある。

1.背景及び研究概要
 金,銀,白金,およびパラジウムなどの貴金属は,宝飾品のほか電気・電子部品の原料や触媒として幅広く使用されています。これら貴金属の需要が産業界に於いて益々増加していますが,貴金属の埋蔵量は限られています。一方,都市で大量に廃棄される産業廃棄物の中には多くの金属資源が含まれていることが知られており,これら産業廃棄物から金,銀,白金,パラジウムといった高価な貴金属を効率的に抽出しリサイクルを可能にする技術の確立が求められています。現在ある貴金属回収方法としては,活性炭による溶媒抽出法やイオン交換樹脂(注6)やキレート樹脂(注7)による高分子樹脂吸着剤による抽出方法などがありますが,吸着容量が最大でも3mol/kgと小さく,特定の金属を選択的に抽出できない,あるいは選択的に金属認識部位を設計するとコストが2倍以上になるといったことが課題となっていす。また,活性炭による溶媒抽出法では有害な有機溶媒(トルエン等)を使用するため大掛かりな排水の後処理対策が必要になること,イオン交換樹脂やキレート樹脂による高分子樹脂吸着剤による抽出方法では吸着した金属と樹脂を剥離,溶融することが容易でないために樹脂を焼却することで貴金属を抽出しなければならず,タールやコーク等の後処理が面倒な焼却物が残るという環境に対する課題がありました。そこで,本学研究では,原価のほとんどかからないバイオマス廃棄物から調製した吸着剤を用いて,金,銀,白金,パラジウムなどの高価な貴金属から順に抽出できる技術を開発しました。吸着剤は,セルロースおよびリグニンを構造要素に持つ古紙,もしくはポリフェノールを大量に含有する果物廃棄物(柿やレモン等)から摘出し,アミノ化反応を施し調製します。電気・電子部品を塩酸で溶出させた貴金属を含む廃液に対して果物廃棄物から調製した吸着剤を用いた試験では,金が先ず100%吸着することができました。続いて,古紙から調整した吸着剤を導入したところ,導入する官能基の種類によって金,白金,およびパラジウムを選択的に(優先順位を付けて)抽出できることが確認できました。白金,パラジウムそれぞれ80%以上抽出可能です。回収プロセス中に有害物質を一切使用せず,また有害物質が排出されることもないので環境に易しい貴金属回収法といえます。

図2:本技術と溶媒を使用した従来の抽出法の回収過程の違い
 図2:本技術と溶媒を使用した従来の抽出法の回収過程の違い


従来法では,金の回収プロセスでDBU(ウンデセ?7?エンのこと),パラジウムの回収プロセスでDHS(ジーn-ヘキシルスルフィドのこと),白金の回収プロセスでTBP(トリブチルリン酸のこと)の溶媒を使用する必要があります。それぞれの回収プロセスで有害な廃液が発生するため大掛かりな対策が必要となります。一方,本技術では,果物廃棄物由来の廃棄物で先ず金を100%回収し,その後に古紙由来の吸着剤を用いて選択的に白金,ロジウム,パラジウム等を回収することができます。図の例は,ロジウム,パラジウム,白金の順に抽出した場合の例です。

(注6) 金属などのイオンが,吸着剤の金属配位部位に存在するイオンと交換されて吸着される様式を持つ樹脂のこと。
(注7) 金属などが,吸着剤の金属配位部位とカニのハサミが挟み込むような吸着様式をもつ樹脂のこと。


2.競合技術への強み
 今回開発した廃棄物由来の吸着剤を用いた貴金属回収技術の特徴は以下の通りです。
(1) バイオマス廃棄物である古紙と,柿やレモンなどの果物廃棄物から吸着剤を調製するため,吸着剤の原価が安い。
(2) 金,白金,パラジウムといった高価な貴金属を選択的に(特定的に順位を付けて)回収できます。一度に大量の吸着が行なえることでコスト的に有利。
(3) 吸着剤の吸着容量は3〜10 mol/kgで,活性炭や高分子樹脂の吸着容量の3倍以上。特に金に関しては約10 mol/kg回収可能。
(4) 有害な有機溶媒類は一切使用しません。有毒物質を排出しません。
(5) 樹脂焼却の必要がないためダイオキシン類を発生しません。

 表1:産業廃棄物からの貴金属回収技術に関する本技術と従来技術の比較
表1:産業廃棄物からの貴金属回収技術に関する本技術と従来技術の比較


3.今後の展望
 今後は,吸着剤の更なる吸着速度向上のための開発と,吸着剤を大量に調製してパイロットプラントで連続的な回収実験を開始したいと考えています。本吸着剤の調製,もしくは実際に吸着剤を使用した貴金属回収システムの構築に関する共同開発先企業を募集します。


4.研究者の略歴
 2003年4月 早稲田大学理工学総合研究センター九州研究所 助手,2005年4月 佐賀大学理工学部 助手,2007年4月 佐賀大学理工学部 助教


5.問い合わせ先
(1) 技術内容について
  川喜田 英孝(佐賀大学理工学部 助教)
  TEL : 0952-28-8670  FAX : 0952-28-8670  
E-mail:メールアドレス
  化学工学研究室HP:http://www.chem.saga-u.ac.jp/ChemStf/chemeng/








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