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2009年2月4日
 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
北海道大学大学院工学研究科

翼の負圧を利用して船底で気泡を発生,
摩擦抵抗を低減し,燃費を約10%向上
‐ フェリーの通年実験でその効果を実証 ‐

 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として,北海道大学大学院工学研究科准教授の村井祐一氏は,翼の負圧を利用し,航行中の船舶の船底から高効率に気泡を発生させ,船底の摩擦抵抗を低減させる技術の研究に着手しました。この技術は,船底における海水との摩擦低減により,船舶の燃料費節減と高速化の両方に即効的に寄与します。すでに連携企業のランドエンジニアリング社の通年実験により約10%の燃費向上を実証済みです。
 海水との抵抗を低減する従来技術として水中翼船などが知られていますが,比較的小型の船舶などにしか適用できないといった課題がありました。本技術はタンカーなどの大型船舶に適用可能で,水中翼船などの持つ課題を解決しています。
 今後,本技術が多くの船舶に適用されることによって,現在大きな問題になっている地球温暖化の防止にも役立つことが期待されます。

図1 翼の負圧を利用し,船底の摩擦抵抗を低減する技術の概略図
図1 翼の負圧を利用し,船底の摩擦抵抗を低減する技術の概略図
翼に迎角を付け,翼の上部に発生する負圧を利用し,誘導路から船底へ空気を導引します。空気が下流に流されるとき,K-H不安定(注1)により界面がちぎれ,微小気泡として放出されます。

(注1) 密度の違う2種類の流体が重い方を下にして層をなす状態は通常安定的です。ところが,それらの流体の間に一定値以上の流速差がある場合には,その境界面が不安定となって,渦巻状の流れを作ることがあります。この不安定現象を K-H(Kelvin-Helmholtz)不安定といいます。

1.研究概要
 本技術は,翼の負圧を利用し,航行中の船舶の船底から高効率に気泡を発生させ,船底の摩擦抵抗を低減させる技術です。船底における海水との摩擦を低減させることができるため,船舶の燃料費節減と高速化の両方に即効的に寄与します。すでにフェリーの通年実験により約10%の燃費向上を実証済みです。
 本技術は,次のような原理を利用しています。水面下で翼を水平に走らせると下流に窪みが発生します。翼に迎角を付けると一定角度までは(二相流としての剥離が発生する直前まで)窪みが増大します。これを図1のように空気の誘導路を設けて船底で実現させると,理論的に大気圧のまま一定の深さまで空気を船底に導引することができます。導引された空気が下流に流されるときK-H不安定(注1)により界面がちぎれ,微小気泡として放出されます。
 翼の挿入により発生する抵抗に比べ,翼の揚力の反動としてもたらされる気泡発生の方が何倍もの省エネ効果をもたらします。

 本技術の特徴は,以下のようなものです。
1.
深い位置でガスを発生させるには,これまで大きな吐出圧力のブロア・コンプレッサーが必要でした。しかし本技術は圧力環境を変えることなく移動翼を利用して大量のガスを誘導できます。
2.
導引されたガスは微小気泡(マイクロバブル)となって放出されます。このときK-H不安定という界面の自然現象を利用するため微小化に別途,エネルギー注入を必要としません。翼速度を10m/s程度まで上げると,10μm程度まで分裂した白濁した高濃度なマイクロバブルが生じます。
今後,本技術が多くの船舶に適用されることによって,現在大きな問題になっている地球温暖化の防止にも役立つことが期待されます。

2.競合技術への強み
 本技術は,従来の気泡発生方法と比較して次のような優位性があります。
(1)
少ない動力で水中に大量のガスを気泡として発生させることができます。
(2)
液体の運動エネルギーを利用する仕組みで,液体の種類によらず一定性能が保持されます。
(3)
多孔質板などを経由しないので,管理・メインテナンスが最小限で済みます。

表1 本技術と従来技術との比較表
表1 本技術と従来技術との比較表

(注2)円管を細く絞ったベンチュリ管を利用し,その中で発生するせん断歪み速度と急峻な圧力勾配を利用して気泡を微細化する方法

3.今後の展望
 今後,少ないエネルギーで微小気泡を大量に発生させるための最適化研究に取り組んでいきます。また,翼以外の幾何形状でも,種々の特性を生むことが考えられ,さらなる技術の高度化を目指します。

4.その他
(1)研究者の略歴
平成7年3月東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻博士課程途中退学,平成8年7月博士号取得(工学),平成7年4月福井大学工学部機械工学科 助手,平成12年6月福井大学工学機械工学科 助教授,平成13年3月ロンドン大学インペリアルカレッジ機械工学科 客員研究員,平成15年4月北海道大学工学研究科機械科学専攻 助教授,平成19年4月北海道大学工学研究科エネルギー環境システム専攻 准教授

(2)受賞
平成9年 日本機械学会論文賞(日本機械学会)
平成9年 可視化情報学会研究奨励賞(可視化情報学会)
平成17年 日本機械学会論文賞(日本機械学会)
平成19年 文部科学大臣賞若手科学者賞(文部科学省)
平成19年 油空圧機器振興財団論文賞(日本機械学会推薦)
平成20年 可視化情報学会技術賞(可視化情報学会)

5.問い合わせ先
(1) 技術内容について
  北海道大学大学院工学研究科エネルギー環境システム専攻
流動場システム工学研究室 
村井祐一
  TEL:011-706-6372  E-mail:メールアドレス
  研究室HP:http://ring-me.eng.hokudai.ac.jp/murai/index.html
北海道大学大学院 流動場システム工学研究室
(2) 制度内容について
  NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
  坂橋,松崎,千田,長崎
  TEL:044-520-5174   FAX:044-520-5178
個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)


【提案書】
  ・北海道大学大学院工学研究科エネルギー環境システム専攻からの提案書 [2009年02月05日]
【関連記事】
  ・船舶のCO2排出量削減の切り札 実用化が進む翼の負圧を利用した摩擦低減技術[2009年3月2日]






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