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2009年2月10日
 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
静岡大学 機器分析センター

河川・工場廃水から過塩素酸イオンを
従来比10倍以上除去する手法を開発
‐ 色の変化でイオン除去を目視できるカプセル分子型除去剤 ‐

 NEDO技術開発機構の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として,静岡大学機器分析センターの准教授 近藤満氏は吸着状況に応じて色が変化し,高選択的でかつ再生が容易な過塩素酸イオン(注1)除去剤(カプセル分子型除去剤)を世界で初めて開発しました。従来のイオン交換樹脂(注2)と比べ,30分程度で除去できる過塩素酸イオンの単位あたりの除去量が約10倍(0.1g/g)となっています。このカプセル分子型除去剤は回収して何度でも再利用できます。
 過塩素酸イオンは,子供が定常的に摂取すると発育障害を起こすと指摘されている有害性の陰イオンです。最近,牛乳や水道水から安全基準濃度を超える過塩素酸イオンが検出されるなど社会的な問題になっています。しかし,従来のイオン交換樹脂では,吸着剤の再生が不可能なため再利用が困難で,結果としてコストがかさむといった問題がありました。この再利用が不可能になった大量の吸着剤を焼却処分にするなど,産廃として処理しなければならいことも問題となっています。
 今後,同センターでは,本技術であるカプセル分子型除去剤の実用化を加速化させるために,工場廃水を用いた応用実験,カプセル型除去剤の大量合成法の確立およびカプセル型除去剤のカートリッジ化を民間企業との意見交換や共同開発を通じて進めて行く予定です。

図1 開発した分子型カプセルの構造図 
図1 開発した分子型カプセルの構造図 
不溶性高分子化合物を過塩素酸塩を含む水溶液に添加すると,この高分子化合物が固体状態で構造変化を起こし,過塩素酸を取り込んだカプセル型分子へと変化する。

(注1)
過塩素酸の電離により生成する1価の陰イオン。金属イオンと最も相互作用しにくいイオンの一つで,また溶解度も高いため,選択的な吸着や完全な除去が困難とされる。
(注2)
きわめて小さな球状をした合成樹脂のこと。分子内に多数の手(イオン交換基)をもち,陽イオンまたは陰イオンを可逆的に吸着する性質をもつ。


1.背景及び研究概要
 人間の成長は,甲状腺にヨウ素が取り込まれることで成長ホルモンが誘起され進みます。過塩素酸イオンは,このヨウ素の取り込みを阻害する活性をもつことから,成長ホルモンの以上分泌に起因する“成長が止まらない疾患”の治療薬として使用されています。逆に,このことは健常な乳幼児が定常的に過塩素酸イオンを摂取し続けると,発育障害を引き起こす事を意味します。実際に,発育障害に加え,知的障害,運動障害などの悪影響を発現することが懸念されており,その安全基準濃度はおよそ 6 ppb であるとされています。過塩素酸イオンによる汚染源の一つとして工場からの排水が挙げられます。工場排水に含まれる過塩素酸イオンを除去する手法としては陰イオン交換樹脂がありますが,陰イオン交換樹脂の表面に過塩素酸イオンを単純に吸着させるこの手法では,吸着剤の再生が不可能なため再利用が困難で,結果としてコストがかさむといった問題がありました。この再利用が不可能になった大量の吸着剤を焼却処分にするなど,産廃として処理しなければならいことも問題となっています。
 そこで本センターでは,過塩素酸イオンを高効率で除去し,低コストで環境に易しいカプセル分子型の新しい除去剤を開発しました。吸着除去に要する時間が30分程度(1/10以下)で,従来技術において最も有効とされている強塩基性イオン交換樹脂と同等の吸着量を示します。また,カプセル分子型の除去剤は回収して何度でも再利用できるため低コスト化が図れるとともに,大量産廃処理の問題も発生しません。吸着状況に応じて色の変化を目視できるため吸着剤の活性度を図ることが困難であった従来の吸着剤の課題を克服します。過塩素酸イオン以外の陰イオンの影響も受けにくく,さらに幅広いpH(水素イオン濃度指数)範囲の水溶液に対しても有効です。


2.競合技術への強み
 本技術は,従来技術と比較して次のような優位性があります。
(1) 高効率化:従来技術において最も有効とされている強塩基性イオン交換樹脂と同等の除去量(単位重量あたりの除去量は約10倍(0.1g/g))
(2) 作業時間短縮:過塩素酸イオンの吸着除去に掛かる総作業時間を1/10以下に短縮
(3) 低コスト化:除去後の素材から出発物質(注3)である高分子錯体を簡便に再生
(4) 環境対策:除去剤の大量産業廃棄物の処理問題なし
(5) 様々な水溶液に対応:他の陰イオンの影響を受けにくいため,広いpH範囲の水溶液に対して機能
(6) 視覚化の実現:過塩素酸イオンの除去の様子を除去剤の色の変化により目視可能(世界で初めて)

(注3)
除去処理で生成するカプセル分子は有機溶媒に溶かした後,弱アルカリ性にするだけで bitb が回収できます。これを硫酸銅と処理すれば本除去剤が再生できます。


 表1 過塩素酸除去技術に係る従来技術と本技術との比較表
表1 過塩素酸除去技術に係る従来技術と本技術との比較表



3.今後の展望
 カプセル分子型除去剤の実用化を加速化させるために,(1)工場廃水を用いた応用実験,(2)カプセル分子型除去剤の大量合成法の確立,(3)簡便な除去プロセスを実現するためのカプセル分子型除去剤のカートリッジ化の開発,について企業,研究機関と意見交換や共同開発を通じて進めていきます。将来的には,環境水の処理剤として応用することで,飲み水などいわゆる,食の安全に貢献できる除去剤の開発も検討して行きます。


4.その他
(1)研究者の略歴
平成7年3月大阪大学大学院博士(理学)取得,平成5年4月東京都立大学理学部化学科助手,平成10年8月京都大学大学院工学研究科助手,平成13年4月静岡大学理学部化学科助教授,平成19年4月静岡大学機器分析センター准教授
(2)受賞
平成10年9月27日平成10年度錯体化学研究会研究奨励賞 錯体化学研究会
平成11年9月25日弟14回日本化学会「若い世代の特別講演会」講演賞
平成17年3月10日2004年度「矢崎学術賞(奨励賞)」
平成20年11月10日 IWA Chemical Industried 2008 International Conference, Beijing(水と化学産業に関する国際会議,中国,北京) [Poster Presentation Second Place Award]
平成20年11月9日IWA Chemical Industried 2008 International Conference, Beijing(水と化学産業に関する国際会議,中国,北京) Keynote Lecture


5.問い合わせ先
(1) 技術内容について
  静岡大学 准教授 近藤 満
  TEL:054-238-4763     FAX:054-237-3384  
E-mail:メールアドレス
  研究室HP:http://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~scmkond/Kondo_Lab/
(2) 制度内容について
  NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
村上,松崎,千田,長崎
  TEL:044-520-5174    FAX:044-520-5178
  個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)


【提案書】
  ・静岡大学機器分析センターからの提案
河川・工場廃水等環境水から過塩素酸イオンを従来比10倍除去するカプセル分子型除去剤に関する提案






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