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2009年2月17日
 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
北陸先端科学技術大学院大学

円偏光を発現する有機EL素子を用いた3次元表示技術を開発
‐ 発光色の細かい制御が可能な,分子材料による円偏光発光に成功 ‐

 NEDO技術開発機構の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として,北陸先端科学技術大学院大学(石川県能美市)の仕幸英治氏は,円偏光(注1)を発現する有機EL(注2)素子を用いた3次元表示技術の開発に着手しました(図1)。
 通常の有機EL素子では陰極にAl(アルミニウム)などの非磁性体が用いられています。本開発ではFe(鉄)等の強磁性体を使用し,強磁性陰極から発光層へスピン偏極電子を注入することで円偏光を発現させます。これまでにFe陰極素子から,室温,印加磁場3000 Oeにて,円偏光度約0.5%を有する発光を観測することに成功しました。
 無機材料をベースとしたスピン注入方式による円偏光素子は,不可視光である赤外光によるものしか発現できていないため,応用が限られています。本技術の,有機EL素子による可視光での円偏光素子を開発することで,有機ELディスプレイや電子ペーパーなどにおける3次元表示の実現が大いに期待されます。立体視の実現には視差を生むために2つの画像情報が必要です。今後,本技術の円偏光度をさらに向上させることで,円偏光の左右2成分の明確な作り分けを行い,それぞれの成分に異なる画像情報を持たせることで立体視を目指します。

図1.有機EL素子を用いた円偏光の発光概念と,その円偏光度の磁場依存特性
図1.有機EL素子を用いた円偏光の発光概念と,その円偏光度の磁場依存特性
(左図)通常の有機EL素子では陰極にAlなどの非磁性体を用いますが,本開発ではスピン偏極電子を発光層に注入するために,陰極にFeなどの強磁性体を採用しています。(右図)Fe陰極素子から,室温,印加磁場3000 Oeにて,円偏光度約0.5%を有する発光を観測。

(注1) 電場(および磁場)の振動が伝播に伴って円を描く偏光で,回転方向によって右円偏光と左円偏光がある。
(注2) 発光層が有機化合物からなる発光素子および技術で,注入された電子と正孔の再結合により発光する。


1.開発の背景
 近年実用化が始まった有機EL素子(有機電界発光素子)は,有機電子デバイスの一つです。その発光のメカニズムが分子内の電子スピン状態と密接に関係することが分かっている一方で,そのスピン状態を積極的に制御しようとする研究は世界的に見ても極めて少ないのが実情です。
 本研究では,強磁性電極を有する有機EL素子を作製し,素子の強磁性電極からスピン偏極キャリアを発光層に注入することにより,発光過程のスピン状態を制御しています。素子の発光過程におけるスピン軌道相互作用を利用した,円偏光 (スピン偏極発光)を取り出すことを目指しています。このことにより,有機EL3次元表示ディスプレイや電子ペーパーにおける立体画像表示などの応用が可能となり,より臨場感のあるエンターテインメントや教育用途,医療用途など様々な用途が期待されます。


2.本技術の強み
(1) 可視光でも円偏光発光が可能
スピン注入方式による円偏光発光自体は,ガリウム砒素(GaAs)をベースとした無機LEDから既に観測されていますが,その発光は目に見えない赤外光であり,ディスプレイなどでは使えません。本研究では可視光でも円偏光発光する素子を開発しています。
(2) 発光色の細かい制御が容易に可能
無機発光素子における発光色の細かな制御にはベース材料の変更が必要となり応用が困難ですが,有機分子では官能基を変えることにより発光色を容易に細かく制御できます。
(3) 3次元表示ディスプレイへの応用において鑑賞位置が自由
既存の3次元表示ディスプレイ技術では画像鑑賞位置が固定されますが,本技術は発光そのものが左右2成分を用いた円偏光であるため,鑑賞位置の自由な設定が可能です。


表1.円偏光発光3次元ディスプレイにおける有機EL素子と無機LED素子による比較
表1.円偏光発光3次元ディスプレイにおける有機EL素子と無機LED素子による比較



3.今後の展望
 本技術では,円偏光度における改善余地が大きいため,引き続き円偏光度を上げるための技術開発を行っていきます。 また,当面の産業化における用途としては,有機ELディスプレイの偏光板削減による薄型化技術や薄型ディスプレイからの3次元表示技術に注力していく意向です。 研究開発においては,高効率な円偏光発光を目指すにあたり,特に発光分子材料メーカーとの意見交換や共同開発なども積極的に推進,提案していきます。


4.その他
(1)研究者の略歴
1997年 東北大学工学部応用物理学科卒業, 1997〜1998年 新日本製鐵株式會社 LSI事業部半導体デバイス研究開発センター 研究員,2001年 東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻修士課程修了2002〜2004年 日本学術振興会 特別研究員,2004年 東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻博士課程修了, 2004〜2007年 北陸先端科学技術大学院大学 助手,2007年〜 北陸先端科学技術大学院大学 助教
(2)受賞
2000年 日本応用磁気学会(現,日本磁気学会) 武井賞(学術奨励賞)


5.問い合わせ先
(1) 技術内容について
  北陸先端科学技術大学院大学 
マテリアルサイエンス研究科 藤原研究室 仕幸英治
  TEL: 0761-51-1553   FAX: 0761-51-1149  
E-mail:メールアドレス
  研究室HP: http://www.jaist.ac.jp/~fujiwara/index-j.html
(2) 制度内容について
  NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
  瀧浦,松崎,千田,長崎
  TEL: 044-520-5174    FAX: 044-520-5178
  個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)


【提案書】
  ・北陸先端大・マテリアルサイエンス研究科からの提案
円偏光を発現する有機EL素子を用いた3次元表示技術に関する提案






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