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2009年2月24日
 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
東京大学・情報理工学系研究科

焦点距離を2ms(0.002秒)で調節可能な
液体を用いたダイナモルフレンズを開発
‐ 従来の10倍以上高速なオートフォーカスを実現 ‐

 NEDO技術開発機構の産業技術研究助成事業(予算規模:約50億円)の一環として,東京大学・情報理工学系研究科助教の奥 寛雅氏は,焦点距離を2ms(0.002秒)という短時間で調節可能な液体を用いたダイナモルフレンズ(Dynamorph Lens)(注1)を開発しました(図1)。
 本技術は,液体同士の界面を高精度屈折面として利用することで高い解像力を実現しています。また,高速な応答を持つことで知られている積層型ピエゾ素子により液体に圧力を加えることで,高速に焦点距離の調節を行うことが可能です。従来のカメラで早い動きの被写体を撮影する場合,焦点が合わずに決定的なシャッター・チャンスを逃すことがありましたが,本技術を使用したレンズを使えばそうしたことがなくなります。また,従来は,レンズ移動機構系を使って焦点距離を調節していたため,小型化するのが困難でした。本技術は,光学系からレンズ移動機構を省くことができるため,光学系の小型化に寄与します。
 今後,高速な対象でもオートフォーカスを可能にするカメラやビデオ用光学素子などとして応用展開を図って行きます。

(注1)液体同士の界面を高精度屈折面として利用し,積層型ピエゾ素子により液体に圧力を加えることで,ダイナミックに焦点距離を変えられる可変焦点レンズ。

図1.試作したダイナモルフレンズ(左)と当該レンズを用いて高速に焦点位置を制御した結果(右)
  図1.試作したダイナモルフレンズ(左)と
     当該レンズを用いて高速に焦点位置を制御した結果(右)

連続写真中の画面左上にある電子部品表面から,画面右下の基盤表面に焦点位置を移動させています。時刻0に制御を開始して,2ミリ秒後には基盤表面にフォーカスがあっていることがわかります。


1.開発の背景
 近年,液体界面を屈折面とした可変焦点レンズ技術が登場し注目を集めています。液体界面は,変形が容易であることに加え,理想的には形状が球面となるため可変焦点レンズの屈折面として適しています。特に液体の濡れ性が電気的に制御できることを利用して面の曲率を制御する方式は複数の企業により研究・開発され,実用に非常に近い段階に入っています。これらは特に光学系の小型化・省電力化を実現するためのキーデバイスとして開発されています。
 一方,可変焦点レンズのもう一つの可能性として,焦点距離制御の高速化が挙げられます。既存のほとんどの焦点距離制御は,光学系を構成するレンズ(群)位置を動かすことで実現されており,その高速化は困難でした。しかし,可変焦点レンズでは表面形状のわずかな変化のみで焦点距離を大きく変えることが可能であり,高速化が容易であることが期待されます。
 研究代表者は積層型ピエゾアクチュエータ(注2)を利用する高速焦点調節を実現する駆動原理と,実用的な収差(注3)量の可変屈折面である液-液界面とを組み合わせることで,高速かつ高解像力の可変焦点レンズを研究・開発してきました。開発した可変焦点レンズは,図2に示すように堅い容器の内部に2種類の互いに混ざらない液体を入れた構造を持ちます。2種類の液体は容器内に作成された円形開口で互いに接しており,この部分が光線を屈折する面として機能します。界面形状はピエゾアクチュエータが伸縮することに伴う容積変化を利用して変化させます。この方式では液-液界面がダイナミックに変形するので,この方式の可変焦点レンズをダイナモルフレンズと名付けました。

(注2)ピエゾ圧電効果を応用した位置決め素子。ナノメータから数百ミクロンメータの範囲での極めて微小な位置を決められる。ピエゾ圧電効果とは,ある結晶に機械的圧力を加えた場合,これに比例して電荷を発生する現象で,すでに多くの機器で使われています。
(注3) 収差とは,レンズの端から入ってくる光の焦点がずれてしまい,レンズによって理想的な結像からのズレが生じることです。



図2.ダイナモルフレンズの断面図と可変焦点の仕組み
  図2.ダイナモルフレンズの断面図と可変焦点の仕組み




2.本技術の強み
本技術は,従来のレンズと比較して次のような優位性があります。
(1) 高い光学性能と,高速な焦点距離制御を両立
既存のカメラレンズや液体の濡れ性を電気的に制御する可変焦点レンズは,光学性能が高く綺麗な像を得ることができますが,焦点距離の制御が100ms程度と遅いという欠点がありました。これに対し,本技術は高い光学性能と,2msでの高速な焦点距離制御を両立する点に優位性があります。
(2) 小型化が容易
既存のカメラレンズのように物理的にレンズを移動させる必要がなくなり,光学系が小型になります。
(3) 安い製造コスト
精密な成形と組み立て技術が要求される既存のレンズに比べ,本技術は基本的に容器に液体を封入するだけの単純な構造を持つため,製造コストが安くなります。


  表1 本技術と従来技術との比較表
表1 本技術と従来技術との比較表


3.今後の展望
 今後,高速な対象でもオートフォーカスを可能にするカメラやビデオ用光学素子として,またレーザ加工機のレーザ焦点位置を3次元的に制御するための光学素子として,ダイナモルフレンズの応用展開を図っていきます。

4.その他
(1)研究者の略歴
1998年東京大学理学部物理学科卒業,2003年東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程修了,博士(工学),2003年(独)科学技術振興機構(当時 事業団)グループメンバ (研究員),2005年東京大学大学院情報理工学系研究科助手
(2)受賞
2005年 計測自動制御学会システムインテグレーション部門SI2005ベストセッション講演賞
2006年 Best Paper in Biomimetics, IEEE Int. Conf. on Robotics and Biomimetics


5.問い合わせ先
(1) 技術内容について
  東京大学 情報理工学系研究科システム情報学専攻 石川小室研究室 奥寛雅
  TEL:03-5841-6937,FAX:03-5841-6952  
E-mail:メールアドレス
  研究室HP: http://www.k2.t.u-tokyo.ac.jp/members/oku/oku-j.html
石川小室研究室
(2) 制度内容について
  NEDO技術開発機構 研究開発推進部 若手研究グラントグループ
  瀧浦,松崎,千田,長崎
  TEL: 044-520-5174   FAX: 044-520-5178
  個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)


【提案書】
  ・東京大学・情報理工学系研究科からの提案
焦点距離を2msで調節可能な液体を用いたダイナモルフレンズの開発に関する提案






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