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2010.01.29
 
国立大学法人 静岡大学

薬液を使用しない低環境負荷型の洗浄技術を開発

 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として,静岡大学 工学部機械工学科の真田俊之助教は,薬液を一切使わずに水だけで洗浄する工業・産業プロセス向けの新しい枚葉式(注1)洗浄技術を開発しました。水蒸気と水を混合噴射させる手法で,蒸気がもつ凝縮効果により,濡れにくい極微細な表面でも効果的に洗浄できる技術です。ノズル形状や設計を工夫し蒸気の噴流を制御することで,非常に細かなパターン内やナノスケールのパーティクル(注2)など,対象物を傷つけることなく効率良く除去でき,再現性にも優れます。半導体デバイスやプリント基板,光学レンズ,大型ガラスの洗浄用途のほか,医療器具や食品,一般家庭での洗浄など,洗浄にかかるあらゆる分野で応用が期待されます。


図1 水と水蒸気の混合噴流を用いた低環境負荷型洗浄技術の概略図
図1 水と水蒸気の混合噴流を用いた低環境負荷型洗浄技術の概略図
(左)蒸気と水を混合して噴射している様子。ドライエッチング後のポリマーや不要となったフォトレジストの同時除去が可能です。(中)洗浄処理前のシリコンウェハー表面。ポリマーやフォトレジストが付着 。(右上)空気と水で洗浄後のウェハー表面。ポリマーやフォトレジストが残留。 (右下)蒸気と水で洗浄後のウェハー表面。ポリマーやフォトレジストが完全に除去されています。

(注1)
半導体製造装置などにおいて,シリコンウェハーを一枚ずつ洗浄処理する方式。従来の半導体製造工程では何十枚ものシリコンウェハーに対して一括して洗浄を行う方式が主流でしたが,近年はウェハーの大口径化や製造処理の微細化・高精度化に伴って枚葉型の製造工程が増加しつつあります。
(注2)
パーティクル(particle)とは,チリやホコリなど微細な粒子状の異物のことで,半導体製造工程(特に,シリコンウェハーに集積回路を製造する前処理工程)では不良品が発生する原因となります。


1.背景及び研究概要
 半導体デバイス製造工程では,デバイスの微細化,新規材料・プロセスの導入,地球規模の環境問題などから,従来の一括型大量洗浄で使用する薬液使用量を減らし,再現性の高い洗浄技術が求められています。従来の半導体製造工程における洗浄技術としては,アンモニア水,塩酸,過酸化水素水を洗浄液として使うRCA洗浄技術が最も一般的です。しかし,大量のウェハーを同時処理するため,異物の再付着など洗浄による再汚染や,微細化の進んだ最先端の半導体デバイスでの洗浄力不足,再現性の低下,洗浄後の廃水や廃液が多い,などの問題がありました。一方,産業分野で実用化が始まった空気と水(薬液)の混合噴流による洗浄では,高圧空気を使用するため対象物で発生するダメージや,それでも除去できない局所での洗浄などの問題があります。
 そこで,静岡大学工学部機械工学科では,空気の代わりに,凝縮効果の高い水蒸気に着目し,水蒸気と水を混合噴射させる洗浄技術を開発しました。水だけを使用したこれまでの他技術と比べ,低圧にも関わらず桁違いに優れた洗浄能力(ナノスケールでのパーティクル除去)を実現しています。また,フォトレジストやパーティクルの洗浄を同時に行うことができるため,スループットを大幅に向上させることが可能となります。ポリマー洗浄で薬液が必要な場合でも,適度な物理力と効率良く薬液を浸透させるため,極微量の薬液(数百ppm程度)の投入で十分な洗浄効果が得られ,他の洗浄技術と比べて大幅な環境負荷の低減となります。

2.競合技術への強み
 この技術には,次のような強みがあります。
(1)
濡れにくい表面でも洗浄が可能
表面張力によって濡れにくい極微細な表面でも,凝縮効果によりきちんと濡らすことができ,十分に洗浄できます。
(2)
洗浄時の制御が容易であり,プロセスの簡略化が可能
物理力を利用しているため,ノズルの形状や設計を工夫することで細かく制御できます。また,レジストやポリマーなど,それぞれ異なった薬液が必要だった処理を今回の技術では同時に行うことができます。洗浄にかかるプロセスを簡略化することで製造コストの削減にも繋がります。
(3)
水のみ,または極微量の薬液を混ぜることで更に飛躍的に洗浄能力を高めることも可能
パーティクルやレジストであれば薬液は不要。ポリマーの場合で,薬液約数百ppm使うだけで洗浄できます(薬液が不要な場合もあります)。


表1 本技術と従来技術との比較表
表1 本技術と従来技術との比較表


3.今後の展望
 今後,静岡大学では,新規材料や新規プロセスへの適応性(洗浄対象物のダメージなど)や様々なサンプルに対する洗浄能力評価を行っていきます。また,クリーンな水蒸気の更なる作製コスト低減を図り,早期の実用化を目指します。特に,半導体以外の分野でどの程度の適用可能性があるのか,またどのようなニーズがあるのかなども含め,薬液を使用できない(もしくは使用量を極力減らしたい)との要望を持つ企業や組織などと意見交換や共同開発を提案します。

4.研究者(真田俊之助教)の略歴
2000年 九州大学工学部機械工学科卒業
2002年 九州大学大学院工学府機械科学専攻修士課程修了
2005年 九州大学大学院工学府機械科学専攻博士後期課程修了
2005年 九州大学大学院工学研究院・助手
2007年〜 静岡大学工学部・助教
(兼任)
2008年 カリフォルニア工科大学, Visiting Associate

5.お問い合わせ先
<本プレス発表の内容についての問い合わせ先>
  静岡大学 工学部・機械工学科 助教 真田俊之
  TEL/FAX: 053-478-1605  
E-mail:メールアドレス
  研究室HP:http://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~ttsanad/
<NEDO制度内容についての一般的な問い合せ先>
  NEDO 研究開発推進部 若手研究グラントグループ 鈴木,松ア,千田
  TEL 044-520-5174   FAX 044-520-5178
  個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)


【提案書】
静岡大学工学部機械工学科からの提案
薬液を使用しない低環境負荷型の洗浄技術を開発に関する提案





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