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2010.02.09
 
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
国立大学法人 大阪大学

高速・低コスト有機半導体単結晶薄膜トランジスタを開発
‐ アモルファスシリコン薄膜トランジスタの5倍の高速駆動を実現 ‐


 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として,大阪大学 理学研究科 化学専攻の竹谷純一准教授は,高速制御性と低コストを両立する有機半導体単結晶薄膜トランジスタを開発しました。高速駆動を可能にする有機材料を,独自開発した塗布法(注1)により単結晶化し,有機単結晶薄膜を作製することによって,現在液晶薄型ディスプレイに用いられているアモルファスシリコン薄膜トランジスタの5倍以上の高速駆動(電子移動度5.0cm2/Vs)性能を実現しました。また,典型的な塗布型有機半導体薄膜トランジスタ(注2)作製に必要なパターニング工程を省くことができるため,印刷法と組み合わせることで大面積ディスプレイの低コスト生産を実現できます。さらに,有機EL素子と組み合わせて曲がるディスプレイとして活用できるほか,電子ペーパーのアクティブマトリックス(注3)材料としての応用などにも期待がもたれます。
 この成果は,2010年2月17日〜19日にnano tech 2010(東京ビッグサイト)で展示されます。

図1 高速制御性と低コストを両立した有機半導体単結晶性薄膜トランジスタの概略図
図1 高速制御性と低コストを両立した有機半導体単結晶性薄膜トランジスタの概略図

(左図)
塗布によって作製した,有機結晶薄膜トランジスタの表面の写真。結晶性の透明で均質な薄膜が形成されています。
(右図)
有機単結晶薄膜トランジスタの概念図と表面の分子間力顕微鏡像。分子のステップが見えるほど平坦な,結晶有機半導体が形成されていることが分かります。有機分子が規則正しく並んだ有機単結晶薄膜を用いたことが,高速有機トランジスタの実現につながりました。
 
(注1)
従来の塗布法では,有機半導体材料を塗布したのちに回路に合わせてパターニングする2段階のプロセスが必要であったが,今回開発した塗布法は,構造物を起点とした結晶成長によるため,回路設計通りに構造物を配置すれば,有機半導体膜の形成と同時にパターニングも可能となる。
(注2)
塗布型有機半導体薄膜トランジスタは,溶液塗布によって簡便・低コストに薄膜が作製できるという利点があるものの,従来技術では,多数の結晶粒の集合した薄膜であったため,結晶粒間の電気伝導が阻害されて,トランジスタの駆動速度やon電流密度に課題があった。
(注3)
アクティブマトリクスとは液晶ディスプレイの駆動方式の一つです。X軸とY軸の2方向に導線を張り巡らし,各画素ごとにアクティブ素子を配置したもので,X軸とY軸の両方から電圧をかけて交点の液晶や有機ELの画素を駆動します。


1.背景及び研究概要
 有機物半導体材料は作製が容易かつ安価で,曲がるディスプレイ(フレキシブルディスプレイ)などユニークな用途としても期待できるため,次世代を担うトランジスタなど基本エレクトロニクス素子への応用開発が盛んに行われています。しかし,実際に薄型ディスプレイを高速で制御する性能(電子移動度)と,大面積ディスプレイの簡便かつ低コスト生産を可能にする製膜方法(塗布法・印刷法など)を両立させるのは困難でした。
 そこで,大阪大学理学研究科化学専攻では,電子移動度が良好な有機半導体材料の一つであるBTBT(Benzothieno benzothiophene:ベンゾチエノベンゾチオフェン)が塗布法に適していることを見出し,さらに有機分子が規則的に配列した単結晶性の有機薄膜を塗布法によって作製することで,簡便で低コスト生産を可能にする高性能有機物半導体薄膜トランジスタの開発に成功しました。従来の塗布法で作製した多結晶薄膜トランジスタと比較して,桁違いの優れた特性(移動度5.0cm2/Vs,On/Off比106)を実現します。現行のアモルファスシリコン薄膜トランジスタと比べて約5倍の高速駆動が可能になったため,4-8倍速の高速駆動薄型ディスプレイとして実用化できる技術です。さらに,将来的には電子ペーパーなどのフレキシブルディスプレイ用アクティブマトリックス材料としての応用にも期待がもたれます。

2.競合技術への強み
 この技術には,次のような強みがあります。
(1)
高速駆動能力
ほかの量産型有機トランジスタと比べて,桁違いに高い性能を持ちます(電子移動度5cm2/Vs)。
(2)
大面積での低コスト化および大量生産化が可能
従来の半導体製造工程と異なり,高価な露光装置やイオン注入装置などを必要とせず,印刷法による低価格作製や大面積量産化が可能です。
(3)
単結晶性の有機半導体薄膜トランジスタの実現による性能安定性の向上
多数の結晶界面を有する通常の多結晶有機半導体薄膜ではなく,単結晶性の有機半導体薄膜トランジスタを実現したことにより,結晶界面への吸着物に由来する化学的不安定性が除かれ,性能の安定化や歩留まりの向上が見込まれます。

表1 本技術と従来手法との比較表
表1 本技術と従来手法との比較表

3.今後の展望
 今後,大阪大学では,多数の有機単結晶薄膜トランジスタを配列してマトリックス化することで,有機半導体薄膜トランジスタの均一性の評価を進めて行きます。また,溶液塗布条件の最適化により,塗布法による有機半導体薄膜トランジスタの歩留まり向上を目指します。特に,有機半導体薄膜の実用化開発については,薄膜トランジスタマトリクスやフラットパネルディスプレイの技術を有する企業・組織などと,次世代薄型ディスプレイの製造技術や量産化技術について積極的な意見交換や共同開発を提案します。並行して委託研究や,研究会・フォーラムの立ち上げも検討する予定です。

4.研究者(竹谷(たけや)純一准教授)の略歴
1989年 東京大学理学部物理学科卒業
1991年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了
1994年 財団法人電力中央研究所・主任研究員
2001年 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 論文博士取得
2001〜2002年 スイス連邦工科大学・客員研究員
2005年 東北大学金属材料研究所・客員准教授
2006年〜 大阪大学理学研究科・准教授

(兼任)
2005〜2006年 理化学研究所・客員研究員

5.お問い合わせ先
<本プレス発表の内容についての問い合わせ先>
  大阪大学 理学研究科 化学専攻 准教授 竹谷純一
  TEL&FAX:06-6850-5398  
E-mail:メールアドレス
  研究室HP:http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/nakazawa/takeya/Top.html
<NEDO制度内容についての一般的な問い合せ先>
  NEDO 研究開発推進部 若手研究グラントグループ 鍵屋,松ア,千田
  TEL:044-520-5174   FAX:044-520-5178
  個別事業HP:産業技術研究助成事業(若手研究グラント)
<その他NEDO事業についての一般的な問合せ先>
  NEDO 広報室 萬木(ゆるぎ),田窪
  TEL:044-520-5151  


【提案書】
大阪大学理学研究科化学専攻からの提案
高速制御,簡便・低コストを両立する高性能有機半導体薄膜トランジスタの開発に関する提案





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