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2010.03.16
 
国立大学法人 山形大学

走査型顕微光散乱による微量ゲル状試料のナノ構造解析システムを開発
〜高粘度,複雑形状,低透明度の試料でも簡便に非破壊・非接触の定量測定が可能に〜


 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として,山形大学大学院理工学研究科の古川英光准教授は,ゲル(注1)内部の網目構造解析に特化した走査型顕微光散乱「SMILS」(注2)を利用した微量ゲル状試料の構造解析システムの開発に成功しました。一般によく利用される含水率測定では得られないナノ構造の情報を数分から30分程度の短時間分析で簡便に得られるようになる技術です。1マイクロリットル台の微量ゲル状試料をSMILSにより光学的に測定し適切な統計処理を施すことにより,試料内部のナノメートルサイズの網目構造を,非破壊,非接触で定量的に測定します。この構造解析システムでは,より高機能なゲルの性能の測定の際に使われる動的光散乱法による内部構造解析で測定が困難であった不均質な試料や透明度が低い試料,高粘度で複雑な形状をした試料でも測定できます。化学,材料,繊維,再生医療や医薬品などの産業分野での利用に加えて医療機器や化学分析機器への組み込み,センサーやアクチュエータへの応用も期待される技術です。

図1 走査型顕微光散乱による微量ゲル状試料の構造解析システムの概略図
図1 走査型顕微光散乱による微量ゲル状試料の構造解析システムの概略図
(左図) 光による測定のため,医薬品や生体組織,機能性樹脂などの微量試料を非破壊・非接触で測定できます。
(右図) ゲル状試料内部の網目構造のサイズと分布を,簡便に定量的に決定できます。

(注1)
ゲルとは,溶媒を含んで膨らんでいるソフトな物質状態であり,例としてはこんにゃくやゼリーなどの食品,ヘアジェルや保湿剤,コンタクトレンズなどの各種化粧品や医薬品,また水分を60〜80%含む生体組織などがあげられます。
(注2)
SMILSはScanning microscopic light scatteringの略で,本学では日本語の略称として「スマイルズ」を用いています。


1.背景及び研究概要
 ゲル材料は化粧品,芳香剤,コンタクトレンズのほか,細胞培養基板,創傷被覆材,薬物放出剤といった医療器具,砂漠緑化,汚泥処理,水質改善,電池などの環境技術で幅広く使われています。近年,高機能なゲルの基礎研究が飛躍的に進み,その工業化や各種製品への応用が期待されています。従来のゲル材料の簡便な分析法としては,ゲルの含水率(膨潤率)分析による固形分の定量評価が一般的です。しかし,より高機能なゲルの性能を精密に制御し効果的に利用するためには,顕微鏡や散乱法を用いた内部構造解析が必須となりますが,ゲルの不均質性が構造解析の障害となるため,均質で透明度の高い試料でないと解析が難しい,専門的な知識が必要などの課題がありました。
 そこで,山形大学大学院理工学研究科では,ゲル試料の微小な領域内部において多数の点をピックアップし,連続的に顕微光散乱で走査を行い適切な統計処理をすることで不均質な試料でも厳密な平均量を測定できることに着目し,従来の含水率に基づいた分析では得ることのできなかった,ナノスケールの網目サイズ分布を定量的に分析できる微量ゲル状試料の構造解析システムの開発に成功しました。例えば,10µµmステップで1mm立方(=1µL)のゲル試料領域内の100カ所を走査測定することにより,網目サイズの分布関数を定量的に決定し,微量試料内部のナノ網目構造についての情報を視覚的・直感的に把握することが可能です。通常のゲル状試料の構造解析の場合,このシステムで測定可能な網目サイズは1nm〜10µm程度で,網目サイズの平均値だけでなく分布の形状も決定できます。この動的光散乱法そのものの利点として,非破壊,非接触で分析を行えることのほか,可視光を使うため安全で,X線や電子顕微鏡に比べて大幅な小型化,省電力化が可能となります。また,均質な試料だけでなく,不均質な試料や高粘度や複雑な形状の試料など,これまで測定できなかった透明度やスケールで測定ができます。独自開発の「SMILS」による構造解析システムは,従来の含水率に基づいた分析法では全く得ることのできなかったナノメートルサイズの網目構造に関する情報を,高い分解能と簡便性の下に得ることができる技術です。網目サイズ分布を定量的に調べることができれば,ゲル状試料の内部構造の定量的な評価や管理が可能になり,工場生産ラインにおける品質管理,劣化や耐久性,腐食性の評価など,さまざまな場面で利用することができます。また,近年開発が進んでいる高機能ゲルを利用した新規機能性材料や新規医薬品,ジェル状化粧品や機能性食品などの開発現場における新しい解析システム,商品開発を加速化させる重要なツールとして活用できる可能性があります。


2.競合技術への強み
この技術には,次のような強みがあります。
(1)
小型な装置による非破壊,非接触の構造解析を実現
動的光散乱法そのものの利点として,非破壊,非接触で分析を行うことができるほか,可視光を使うため安全で,X線や電子顕微鏡に比べて,小型化,省電力化が可能となります。
(2)
不均質,超微量,高粘度なゲル試料を広範囲な時空間領域で測定可能
SMILSの利点として,不均質または格段に微量な試料,高粘度や複雑な形状など,これまで測定が困難だった範囲の測定ができるようになります。動的揺らぎを分析する原理に基づくことで,ナノスケールの構造に関する情報が得られるため,非常に広い時空間領域(100ns〜1h, 0.1nm〜数mm)をカバーできます。
(3)
専門知識が不要で,誰でも簡単に日常的に使用することが可能
この研究で開発している標準化技術と自動化された統計処理により,専門家が不在でも日常的に利用し,研究や開発,製造管理に対して効果的なデータが得られるようになります。


表1 本技術と従来手法との比較表
表1 本技術と従来手法との比較表


3.今後の展望
 今後,山形大学では,本技術による実用型SMILSの製品化を最終目標として,1μLの微量ゲル状試料を研究開発や製造工程の現場で誰もが簡便に扱える実用型SMILSシステムのプロトタイプの開発を進めていきます。また,実用型SMILSシステムの製品化において欠かすことのできない高いユーザビリティの実現への対応も進めます。現在注力している化学や材料,繊維,再生医療・医薬品,食品,化粧品などのゲル関連分野における分析手法としての標準化に加えて,将来的には医療機器や化学分析機器への組み込み,センサーやアクチュエータ(注3)などの電子デバイスやMEMS分野などでも広く利用される要素技術となることを目指していきます。今回,ゲルやソフトマテリアルの材料開発・技術開発・商品開発に関心もしくは実績や知見を有する企業・組織などとの本装置の活用や実用化に関する意見交換,デバイス開発や分析機器開発に関する共同開発,本装置全般に関する研究会やフォーラムの開催を提案します。

(注3)
アクチュエータとは,一般に外的な刺激に対して体積変化や異方的変形などを起こす材料や機構によって物体を動かしたり制御したりする装置のことです。材料や作動機構,入力エネルギーの種類によりさまざまなアクチュエータが開発されています。

4.研究者(古川英光 准教授)の略歴
1991年 埼玉大学理学部物理学科卒業
1996年 東京工業大学理工学研究科物理学専攻博士課程修了
1996年 東京工業大学工学部高分子工学科・助手
2002年 東京農工大学工学部有機材料化学科・助手
2004年 北海道大学大学院理学研究科生命理学専攻・助教授
2009年〜 山形大学大学院理工学研究科機械システム工学専攻・准教授
(兼任)
2004年〜2008年 理化学研究所・客員研究員

5.お問い合わせ先
  山形大学 大学院理工学研究科 准教授 古川英光
  TEL: 0238-26-3197  FAX: 0238-26-3197 
E-mail:メールアドレス
  研究室HP:http://furukawa.yz.yamagata-u.ac.jp/
山形大学工学部広報室 青木
TEL/FAX 0238-26-3419
※大学広報へのお問い合わせの際は上記工学部広報室へご連絡下さい


【提案書】
山形大学大学院理工学研究科からの提案
走査型顕微光散乱による超微量ゲル試料の構造解析システムに関する提案





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