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2010.03.17
 
国立大学法人 東北大学

長期安定性に優れる高性能CNT薄膜トランジスタの作製に成功
‐ 従来法に比べ易動度は桁違い(8.2cm2a/Vs),強固な共有結合で環境に対して極めて安定 ‐

 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として,東北大学 金属材料研究所 低温電子物性学研究部門の竹延大志准教授は,従来に比べて桁違いに特性の優れたカーボンナノチューブ(注1)薄膜トランジスタの作製方法を開発しました。従来のインクジェット印刷(注2)技術を改良し,低濃度のカーボンナノチューブインクを用いた高精度な膜密度制御により作製された薄膜トランジスタは,優れたトランジスタ性能を示します。また,化学的に極めて安定的で,かつ曲げ強度にも優れていることから,この方法により電子ペーパーなどフレキシブルデバイスの実現が期待できるとともに,電極材料などへの応用も期待される技術です。

図1 インクジェット法を用いたカーボンナノチューブ薄膜トランジスタの作製概略図
図1 インクジェット法を用いたカーボンナノチューブ薄膜トランジスタの作製概略図
インクジェット法用いてカーボンナノチューブ薄膜を作製する際に,滴下回数によってナノチューブの密度を制御し,高密度な膜を電極に,低密度な膜をトランジスタの活性層に利用する。右下は,実際に作製した素子の顕微鏡写真。

(注1)
カーボンナノチューブは,炭素(カーボン)のみから構成される直径数ナノメートルの円筒形の物質のこと。構造によっては金属にも半導体にもなるなどの電気的性質に加え,機械的,化学的にも優れた物性を持つため,ナノテクノロジーを支える材料として 多方面から期待されています。
(注2)
インクジェット印刷とは,必要な箇所に微小液滴を滴下する印刷方法のことであり,コンピュータ制御によってインク原料を必要な箇所に必要な量だけ滴下することができる。例えば真空蒸着法やスピンコート法と比べると材料の有効使用率は100倍以上であり,材料の使用量を極力抑えることができる。その為,コスト競争力に優れ,なおかつ環境に優しいデバイス作製方法として注目されている。また,基板を選ばず,コンピュータ制御で自由な素子設計ができるフレキシブルエレクトロニクスやオンデマンドエレクトロニクスへの適用が期待されている。インクジェットプリンティングとも呼ばれる。


1.背景及び研究概要
 薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)は,ガラス基板上にアモルファスシリコンなどを蒸着した電子デバイスで,現在パソコンや薄型テレビの液晶ディスプレイなどの様々な部分に使用されています。しかし,素子作製条件が高温であるため,プラスチックに代表されるフレキシブルな基板上には作製が困難であり,近年注目されているフレキシブルエレクトロニクス実現にはアモルファスシリコンと同等の特性を有し,かつ低温作製可能なトランジスタ材料の開発が必要です。
 そこで,東北大学金属材料研究所では,単層カーボンナノチューブが持つ高い電気的性質と優れた柔軟性に注目し,なおかつプラスチックなどの柔軟な基板上で自在に素子作製が可能なインクジェット法を用いて,単層カーボンナノチューブ薄膜トランジスタの作製に成功しました。印刷技術によりカーボンナノチューブの膜密度を精密に制御することで,これまでインクジェット法で作製した薄膜トランジスタとしては桁違いの優れた特性(易動度1.6-8.2cm2/Vs,On/Off比10,000-100,000)を実現しています。独自に開発したこのインクジェット方式は,元々単層カーボンナノチューブが持つ高い化学的安定性を反映して,環境に対する安定性が非常に高く,曲げ強度では曲率半径7.5mmまでその材料特性が変わることはありません。しかしながら,金属的なナノチューブと半導体的なナノチューブが混在するため,高いトランジスタ特性を実現するには,いかに金属的なナノチューブの影響を抑えるかが問題となっていました。これに対して,東北大学金属材料研究所では極めて濃度の薄いカーボンナノチューブインクとインクジェット法を用いた精密な膜密度制御によって金属的カーボンナノチューブの影響を抑え,高い特性をもつトランジスタの『印刷』に成功しました。また,印刷法で作製する単層カーボンナノチューブ薄膜は,高温での熱処理工程や真空プロセスが不用であり,大掛かりな作製装置を省くことができるため生産コストを大幅に抑えることができます。インク原料のカーボンナノチューブは現在未だ高価な材料ですが,インクジェット手法では原料を極微量のみしか使わないため,従来の真空蒸着法やスピンコート法と比べると材料の無駄が100分の1以下に抑えられ,むしろ生産プロセス全体のコスト削減が可能となります。
 薄膜トランジスタとしての活用のほかにも,電極部分に高密度のカーボンナノチューブ薄膜を半導体部分に濃度調整した薄膜を用いて,化学的に安定かつ加熱処理が必要ない印刷可能な電極材料としての応用などに今後期待がもたれます。


2.競合技術への強み
この技術には,次のような強みがあります。
(1)
高い特性を持つトランジスタが作製可能
易動度(1.6-8.2cm2/Vs),On/Off比(10,000-100,000)を実現しています。
(2)
極めて優れたフレキシビリティを有しており,曲げに対して非常に強い
曲率半径7.5mmまでは特性は変わりません。むしろそれ以上の曲率になると電極自体の物性値が変化します。
(3)
化学的な安定性も極めて高く,大気中でも全く劣化しない
単層カーボンナノチューブは構造的に化学的な反応性が高いダングリングボンドをほとんど持たないため,一般的なグラファイト等の炭素材料と同様に化学的に高い安定性を示します。耐熱温度は,真空中であれば1000℃まで,大気中(空気中)でも200〜300℃位まで物性が落ちることはありません。

表1 本技術と従来手法との比較表
表1 本技術と従来手法との比較表


3.今後の展望
 今後,東北大学では,特殊な絶縁膜を用いることで,プラスチック基板上に完全透明かつ超低電圧駆動の薄膜トランジスタ作製を進めて行きます。また,独自に開発したドーピング技術を用いて論理回路作製や集積化も進めます。特に,カーボンナノチューブ薄膜の実用化開発については,RFID(注3)タグや電子ペーパー,センサー,ディスプレイ等のフレキシブルデバイス全般の開発に関心もしくは実績を有する企業・組織などと,積極的な意見交換や共同開発を提案します。
(注3)
RFIDとは,Radio Frequency Identificationの頭文字を取ったもので,電磁界や電波などを用いた近距離(周波数帯によって数cm〜数m)の無線通信によって情報をやりとりする技術。フレキシブルエレクトロニクスでは,この技術を用いた次世代の情報タグ(例えば,バーコードラベルや身分証)として,フレキシブルなRFIDタグの実現が期待されている。


4.研究者(竹延大志准教授)の略歴
1996年 信州大学理学部物理学科卒業
1998年 北陸先端科学技術大学院大学修士課程(材料科学)修了
2001年 北陸先端科学技術大学院大学博士課程(材料科学)修了
2001年 ソニー株式会社入社
2001年 東北大学金属材料研究所・助手
2007年 東北大学金属材料研究所・助教
2007年〜 東北大学金属材料研究所・准教授
(兼任)
2006年〜2007年 デルフト工科大学(オランダ)・客員研究員
2008年〜2009年 ナンヤン工科大学(シンガポール)・客員研究員
2008年〜 JSTさきがけ「物質と光作用」・研究員


5.お問い合わせ先
  東北大学 金属材料研究所 低温電子物性学研究部門 准教授 竹延大志
  TEL:022-215-2032  FAX: 022-215-2031  
E-mail:メールアドレス
  研究室HP:http://iwasa.imr.tohoku.ac.jp/
東北大学 金属材料研究所 総務課庶務係 佐々木美由紀
TEL: 022-215-2181  FAX: 022-215-2184
※大学広報へのお問い合わせの際は上記総務課庶務係へご連絡下さい


【提案書】
東北大学金属材料研究所からの提案
桁違いに優れた完全透明,低電圧駆動のカーボンナノチューブ薄膜トランジスタ作製技術に関する提案





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