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2010.03.30
 
国立大学法人 北海道大学

余剰バイオマス資源から基礎化学物質を高効率合成する触媒反応プロセスを開発
〜低環境負荷の酸化鉄系触媒を用いて,グリセリンからケトン類,アリルアルコール,プロピレンなどを生成〜


 NEDOの産業技術研究助成事業の一環として,北海道大学大学院 工学研究科有機プロセス工学専攻の多湖輝興准教授は,余剰バイオマス(注1)資源から基礎化学物質を安価に選択合成するジルコニア−酸化鉄触媒反応プロセスを開発しました。触媒供給量の増減により,石油化学プロセスやバイオディーゼルの合成時に副成する含水低品位グリセリンからケトン類(注2)やアリルアルコール,プロピレンを選択的に合成できます。触媒反応は常圧窒素雰囲気下約350℃と比較的低温で進行するため低コスト性に優れます(従来の触媒反応の約三分の一から五分の一)。環境負荷の低い酸化鉄系触媒を基材とし,将来的にはバイオマス資源の有効利用法として幅広く基礎化学物質の合成や製造の応用に期待がもたれます。

図1 バイオマス資源から安価に基礎化学物質を選択合成する触媒反応プロセス技術の概略図
 
図1 バイオマス資源から安価に基礎化学物質を選択合成する触媒反応プロセス技術の概略図
 図1 バイオマス資源から安価に基礎化学物質を選択合成する触媒反応プロセス技術の概略図
(左図)
ジルコニア−酸化鉄触媒により,低位グリセリンから石油化学関連有用物質が合成されます。反応原料に共存する水分子が酸化鉄の格子酸素を介して反応系に寄与します。
(右図)
触媒量を増加させると,反応が逐次的に進みます。触媒量が少ない場合はアリルアルコールが,触媒量が増加するとケトン類が主生成物となります。

(注1)
バイオマス資源とは,石炭や石油のような枯渇性資源ではなく,現生生物体構成物質を起源として再生可能な産業資源のことです。
(注2)
ケトンやアリルアルコールは,農薬,樹脂や香料などの製造原料となり,プロピレンは,炭化水素の一種で化学繊維や合成樹脂などの製造原料となります。いずれも広く用いられる基礎化学物質です。


1.背景及び研究概要
 ケトン類やプロピレンなどの基礎化学物質の製造では,石油から得られるナフサ(粗製ガソリン)を原料に用いています。基礎化学物質をはじめポリマー原料などの有機化合物の触媒反応プロセスには,ゼオライトなどの酸触媒やプラチナなどの貴金属触媒を使用するのが一般的です。今日,バイオマス資源からの触媒反応プロセスにおいても,これらの触媒を使用した石油化学に基づく触媒反応を踏襲しているのが現状です。
 そこで,北海道大学大学院工学研究科有機プロセス工学専攻では,石油化学プロセスやバイオディーゼルの合成時に副成する含水低品位グリセリン(粗製グリセリン)にジルコニア−酸化鉄触媒系反応を用いることで,工業用基礎化学物質であるケトン類,アリルアルコール,プロピレンを生成することに成功しました。反応原料に共存する水分子が酸化鉄の格子酸素を介して反応系に寄与し,触媒供給量を増加させると反応が逐次的に進みます。また,ジルコニア−酸化鉄触媒系の反応では,粗製グリセリンに多量に含まれる水やアルカリ金属イオンによる触媒の活性劣化が抑制されます。触媒量が少ない場合はアリルアルコールが,触媒量が増加するとケトン,プロピレンなどが主生成物となって合成されます。この触媒反応は,低品位グリセリンを原料とし,窒素雰囲気下で約350℃と比較的低温で進行するため,化学合成物質を低コストで合成可能となります。ナフサを原料とする従来の触媒反応と比べ,おおよそ三分の一から五分の一のコスト削減が可能となります。
 このジルコニア−酸化鉄触媒反応は,下水汚泥,発酵残さ,パーム廃棄物などの余剰バイオマスを原料としてアセトン,アリルアルコール,プロピレン,フェノール類などの基礎化学物質の合成が可能です。将来的には石油代替資源としてのバイオマス資源の有効利用法として幅広く基礎化学物質の合成や製造への応用に期待がもたれます。


2.競合技術への強み
この技術には,次のような強みがあります。
(1)
低環境負荷の触媒反応
環境負荷の少ない酸化鉄系触媒を基材にした反応です。
(2)
余剰バイオマス資源の有効利用による基礎化学物質の生成
石油化学プロセスやバイオディーゼル合成の副生成物である含水低品位グリセリンやアルカリ金属水溶液を含む粗製グリセリンを原料とし,ケトン類,アリルアルコール,プロピレンなどのC3化合物(注3)を合成します。
(3)
低コストを実現
常圧固定層流通式反応器を使用し,窒素雰囲気下で約350℃と比較的低温で反応が進行するため,高圧装置,耐高温反応器,水素ガスが不要となり,その分コストを削減できます。触媒の酸化鉄は鉄鉱石として世界中に存在するため,安価に入手可能です。

(注3)C3化合物とは,炭素(元素記号C)を3つ含む化合物のこと。



表1 本技術と従来手法との比較表
表1 本技術と従来手法との比較表


3.今後の展望
 今後,北海道大学では,このジルコニア-酸化鉄系触媒反応プロセスの実用化に向けて,生成物選択性を向上させるための触媒開発や,反応と分離工程を含めた総合的なプロセス設計の研究を進めます。将来的にはバイオマス資源の有効利用法として幅広く基礎化学物質の合成や製造に利用される技術として応用されることを目指します。環境事業関連技術を保有する企業や団体,基礎化学物質の製造・合成技術開発に実績を有する組織や事業者とのバイオマス資源からの石油化学関連有用物質の合成に向けた意見交換や共同開発を提案します。


4.研究者( 多湖輝興 たごてるおき 准教授)の略歴
1993年 京都大学工学部化学工学科修了
1995年 京都大学大学院工学研究科博士前期課程修了
1998年 京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了
1998年 九州大学大学院工学研究科・助手
2002年 北海道大学大学院工学研究科・助手
2006年 北海道大学大学院工学研究科・助教授
2008年〜 北海道大学大学院工学研究科・准教授


5.お問い合わせ先
  北海道大学大学院 工学研究科 有機プロセス工学専攻 准教授 多湖輝興 たごてるおき
  TEL:011-706-6551  FAX: 011-706-6552  
E-mail:メールアドレス
  研究室HP:http://www.eng.hokudai.ac.jp/edu/div/orgproc/
 
  北海道大学大学院 工学研究科 工学部 総務課総務担当
  E-mail:メールアドレス
TEL &FAX :011-706-6115
※大学広報へのお問い合わせの際は上記の工学部総務課総務担当へご連絡下さい


【提案書】
北海道大学大学院工学研究科からの提案
バイオマス資源から安価に基礎化学物質の選択合成する触媒反応プロセス技術に関する提案





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