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[2007/01/24]

ニュースリリース
報道関係者各位
埼玉大学・大学院理工学研究科
数理電子情報部門・電気電子システム領域


炭化ケイ素(SiC)半導体の熱酸化膜形成の実時間観測に世界で初めて成功
〜SiC-MOSFETの開発を後押し〜


【新規発表事項】
 埼玉大学電気電子システム領域(埼玉県さいたま市)の土方泰斗助教授らの研究グループでは,炭化ケイ素(SiC)半導体の酸化膜形成過程のその場観察装置を独自開発し,SiC酸化のごく初期の過程を詳細に調べ,界面層の形成される様子を観察することに初めて成功しました。本装置は,酸化膜形成のメカニズム解明に大きく貢献するものです。一方,同研究グループはイタリア国立研究所(CNR)との共同研究によって酸化膜作製プロセスについても検討を行い,界面キャリア捕獲準位密度注1を2桁抑制できるプロセスを考案しました。今回の同研究グループによる一連の研究成果は,SiCの物性値から期待される低オン抵抗注2を実現し,SiC-MOSFET注3の実用化を大きく前進させるものです。

注1: 界面キャリア捕獲準位:酸化膜と半導体の接合界面には,異種材料が共存するために多くの組成遷移相や未結合手,歪みが存在します。これらの欠陥はキャリアを捕獲するために,捕獲エネルギー準位を形成します。
注2: オン抵抗:電子デバイスをオン状態にしたときの順方向電流-電圧特性における抵抗値。
注3: MOSFET:金属-酸化層-半導体(Metal Oxide Semiconductor: MOS)型電界効果トランジスタ(Field Effective Transistor: FET)の略称。


【背景】
 SiCは,シリコンと同様に熱酸化によって良質な絶縁膜であるSiO2を形成できることで知られています。また,SiCは高絶縁破壊電界,高熱拡散係数といったハイパワー素子に適した物性値を有するため,現在SiCパワーMOSFETの開発研究が盛んに行われています。SiC-MOSFETを用いた省電力機器が実現されれば,40km/lを超える超省燃費を有するハイブリッドカーや,省エネ家電の実現はそう遠くなくなります。さらに,SiCはワイドギャップ半導体材料であることから,耐温性・耐放射線性にも優れるので,宇宙基地でも長寿命で動作する電子機器や,原子力設備における防災センサへの応用にも期待がもてます。しかしながら,酸化膜/SiC界面におけるキャリア捕獲準位密度がシリコンのそれと比べ2〜3桁も大きく,実際のSiC-MOSFETは期待通りの性能には達していません。例えば,素子の損失を表すオン抵抗は,SiCの物性値から予測される値よりも1桁以上も大きくなります。界面捕獲準位を低減化させるには,酸化膜/SiC界面の構造と界面層形成のメカニズム解明が鍵を握り,これらの知見を得ることで最適なMOS構造作製プロセスが構築され,期待通りの低いオン抵抗を有するSiC-MOSFETが実現出来ると考えられています。

【訴求点】
 今回開発されたその場観察装置「In-Situ分光エリプソメーター」は,SiCの酸化過程を,高温(900〜1100℃)酸素雰囲気中で非破壊その場観察できる極めて有力なツールです。本装置を用いることによって,酸化膜厚が10ナノメートル以下の酸化のごく初期において,酸化速度が増大する過程が存在することを初めて見出しました。このことは,シリコンと同様に,SiCの酸化初期においてもシリコンまたはその不飽和酸化物の“分子放出現象”が起こっていることを示唆しており,界面層形成のメカニズム解明に資する情報と言えます。
 一方,界面キャリア捕獲準位密度低下プロセスとしては,高濃度窒素イオン注入を用いたプロセスの検討にも着手しています。本手法によると,通常の乾燥酸素熱酸化では最大1013cm-2(数%の出現確率に相当)もあった界面捕獲準位密度が,酸化膜/シリコン界面並の1011cm-3程度まで抑制することが可能となります。本手法には,界面だけでなく酸化膜にも窒素が取り込まれ,界面捕獲準位が下がると同時に酸化膜固定電荷が増加してしまうという問題がありましたが同研究グループは,酸化雰囲気を通常の乾燥酸素から水蒸気酸素に変えることにより,この問題を回避することに成功しました。

【今後】
 In-Situ分光エリプソメーターを用いて高濃度窒素イオン注入基板の酸化過程を調べることで,界面準位密度の抑制に対する窒素の働きを明らかにします。これにより,SiC MOS構造の最適作製プロセスが構築され,低いチャネル抵抗及びオン抵抗を有するSiC MOSFETの実現が可能となります。MOSFETの生産技術を持つ企業との共同開発を進め,今回開発したプロセスにより作製したデバイスの電気的特性の評価を通じて,本プロセスの有効性の検証に取り組んでいきます。

 埼玉大学大学院理工学研究科は,平成18年度からの改組によって部局化され,全教員は研究部門の所属になりました。数理電子情報部門電気電子システム領域は,前身の工学部電気電子システム工学科の研究教育体制を引き継いでいます。土方助教授は,吉田貞史教授並びに矢口裕之助教授と連携し,一つの研究室を司っています。過去,吉田教授は産総研,矢口助教授は東京大学物性研に所属していたことから,本研究室はこれらの機関と盛んに共同研究を行っています。また,土方助教授は平成17年秋季から半年間,イタリア国立研究所(CNR)に客員研究員として赴き,上述の低界面準位密度MOS構造の作製に従事しました。そこでの成果は,イタリア共和国特許として出願されました。さらに,SiC酸化過程のその場観察実験から得た成果は,平成17年度応用物理学会:第14回SiC及び関連ワイドギャップ半導体研究会の研究奨励賞を受賞しました。

【備考】
 本成果は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)産業技術研究助成事業による研究成果です。

【本件に関するお問い合わせ】
埼玉大学 大学院理工学研究科・数理電子情報部門   助教授 土方泰斗
TEL:048-858-3822 FAX:048-858-3822
e-mail:hijikata@ees.saitama-u.ac.jp
URL:http://www.opt.ees.saitama-u.ac.jp/

【テクニカルノートはこちら】
  埼玉大学電気電子システム領域からの提案
・『高濃度窒素イオン注入による炭化ケイ素半導体界面キャリア捕獲準位密度の低減化プロセス』に関する共同開発の提案 [2007年01月25日]
【関連記事はこちら】
  ・SiCデバイスの高性能化と応用範囲拡大へ [2007年02月14日]



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