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埼玉大学・大学院理工学研究科
数理電子情報部門・電気電子システム領域

埼玉大学電気電子システム領域からの提案
『高濃度窒素イオン注入による炭化ケイ素半導体界面キャリア捕獲準位密度の低減化プロセス』に関する 共同開発の提案


 炭化ケイ素(SiC)半導体によるMOSデバイスは,現在,酸化膜/SiC界面における高いキャリア捕獲準位密度が問題となっている。このキャリア捕獲準位の原因を突き止めるため,SiCの酸化過程をその場観察できる測定システムを構築した。また,MOS構造作製プロセスの検討にも着手し,酸化前の基板に高濃度窒素イオン注入を行うことで,約2桁ものキャリア捕獲準位密度の低減化に成功した。今回開発したMOS構造作製プロセスを用いてMOSFETを作製し,電気的特性の評価を通じて本プロセスの有効性を検証するため,MOSFETの生産技術をもつ企業との共同研究を提案する。MOS構造作製プロセスに酸化過程その場観察を導入し,そこで得た情報とMOSFET電気的特性とを対応させてプロセスの最適化を目指したい。


●技術ニーズ
 SiCはシリコンと同様に熱酸化によって良質な絶縁膜であるSiO2を形成できることで知られるが,界面キャリア捕獲準位密度がシリコンのそれと比べ2〜3桁も大きく,MOSFETの性能低下の主要因となっている。例えば,素子の損失を表すオン抵抗は,同耐圧で比較した場合シリコン素子の物性限界を超えているものの,SiCの物性値から予測される値にははるかに及ばないこと等があげられる。界面捕獲準位を低減化させるには酸化膜/SiC界面の構造と界面層形成のメカニズム解明が鍵を握り,これらの知見を得ることで最適なMOS構造作製プロセスが構築され,期待通りの低いオン抵抗を有するSiC-MOSFETが実現出来ると考えられている。

●研究テーマ/技術成果
 SiC半導体酸化膜形成過程のその場観察装置「In-Situ分光エリプソメーター」を開発した。本装置は,SiCの酸化過程を,高温(900〜1100℃)酸素雰囲気中で非破壊その場観察できる極めて有力なツールである。本装置を用いることによって,酸化膜厚が10ナノメートル以下の酸化のごく初期において,酸化速度が増大する過程が存在することを初めて見出した。このことは,シリコンと同様に,SiCの酸化初期においてもシリコンまたはその不飽和酸化物の“分子放出現象”が起こっていることを示唆しており,界面層形成のメカニズム解明に資する情報と言える。
 一方,高濃度窒素イオン注入を用いた界面キャリア捕獲準位の低減化プロセスの検討にも着手している。本手法によると,通常の乾燥酸素熱酸化では最大1013cm-2(数%の出現確率に相当)もあった界面捕獲準位密度が,シリコン/酸化膜界面並の1011cm-3程度まで抑制することができた。本手法の問題点は,界面だけでなく酸化膜にも窒素が取り込まれ,界面捕獲準位が下がると同時に酸化膜固定電荷が増加してしまうということであった。しかし,今回の研究では,酸化雰囲気を通常の乾燥酸素から水蒸気酸素に変えることで,この問題は回避できることを見出した。

●特徴
1. 本評価システムによれば,SiC酸化のごく初期過程を実時間・その場観察することができる。
2. その場観察には光をプローブとして用いているので,試料に対し非破壊・非接触である。
3. 酸化前SiC基板の高濃度窒素イオン注入により,特にチャネル抵抗増大に寄与するといわれている伝導帯近傍の界面準位密度を約2桁減少させられる。
4. 高濃度窒素イオン注入によって一部のSiC層はアモルファス化されるが,アモルファス層は酸化速度が速くなる(シリコンの酸化速度と同等)ため,MOS構造作製プロセスの時間短縮が図れる。


●実用化に向けた課題
1. 今回提案したMOS構造作製プロセスにより,MOSキャパシタに対しての電気的特性の向上が確認されたので,MOSFETに対しても有効かどうかを検証する必要がある。
2. 提案したMOS構造作製プロセスによって電気的特性が向上する物理的理由を明らかにする必要がある。


●今回の提案内容
 今回提案したMOS構造作製プロセスを用いてMOSFETを作製し,電気的特性の評価を通じて本プロセスの有効性を検証するため,MOSFETの生産技術をもつ企業との共同研究を提案する。また,MOS構造作製プロセスに酸化過程その場観察を導入し,そこで得た情報とMOSFET電気的特性とを対応させてプロセスの最適化を目指したい。

●論文/特許実績
<論文>
1. Y. Hijikata, H. Yaguchi, S. Yoshida, Y. Takata, K. Kobayashi, H. Nohira, and T. Hattori, "Characterization of Oxide Films on 4H-SiC Epitaxial (000-1) Faces by High-Energy-Resolution Photoemission Spectroscopy: Comparison between Wet and Dry Oxidation", J. Appl. Phys., vol.100, p.053710 (2006).
2. K. Kakubari, R. Kuboki, Y. Hijikata, H. Yaguchi, and S. Yoshida, "Real Time Observation of SiC Oxidation using In-Situ Ellipsometer", Mater. Sci. Forum, vol.527-529, pp.1031-1034 (2006).
3. Yasuto Hijikata, Sadafumi Yoshida, Francesco Moscatelli, Antonella Poggi, Sandro Solmi, Stefano Cristiani and Roberta Nipoti, “Fabrication of MOS Capacitors by Wet Oxidation of p-type 4H-SiC Preamorphized by Nitrogen Ion Implantation”, Mater. Sci. forum, (accepted).
関連論文:他6件
<特許>
イタリア共和国特許出願中:1件


●備考
本成果は,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)産業技術研究助成事業による研究成果です。

【本件に関するお問い合わせ】
埼玉大学 大学院理工学研究科・数理電子情報部門   助教授 土方泰斗
TEL:048-858-3822 FAX:048-858-3822
e-mail:hijikata@ees.saitama-u.ac.jp
URL:http://www.opt.ees.saitama-u.ac.jp/

【ニュースリリースはこちら】
  ・炭化ケイ素(SiC)半導体の熱酸化膜形成の実時間観測に世界で初めて成功 [2007年01月25日]
【関連記事はこちら】
  ・SiCデバイスの高性能化と応用範囲拡大へ [2007年02月14日]





記事要点掲載先:Tech-On!


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