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長いゲノムDNAを切らずに個別操作,東大
稀少微生物の有用遺伝子探索などへの応用に期待

[2007/03/08]


 酵母などの微生物で約1〜2mm,ヒトやマウスなどの高等生物になると数センチにおよぶゲノムDNA。この長いDNAを断片化せずに自在に操作する技術が登場した。東京大学工学系研究科鷲津・小穴研究室が開発した「ゲノムDNA単分子操作技術」である。
 これまでの技術では,細胞から単離してファイバ化した長いゲノムDNAを途中で切ることなく,捕捉・操作することは難しかった。今回の技術は,2種類の微小構造体を使い分けることで,ゲノムDNAを個別に捕捉して引き伸ばしたり,移動したりすることを可能にした。顕微鏡観察しながらゲノムDNAを直接操作して解析する「ファイバ化ゲノムDNA単分子解析」などへの応用が期待される。
 研究グループの小穴英廣氏は,「この技術を要素技術にすれば,ファイバ化ゲノムDNA単分子解析のアプリケーション開発が加速するだろう。(断片化により)ゲノムDNAを無駄にすることがないので,深海や噴火口などの極限環境にいて大量採取が難しい稀少微生物の解析にも有用だ」と話す。現在,京都大学工学部教授の今中忠行氏と,「稀少微生物の有用遺伝子探索」に関する共同研究を進めている。まずはアプリケーションの1つとして稀少細胞を対象とした遺伝子解析技術を確立していく考えだ。

「ファイバ化ゲノムDNA単分子解析」のアプリケーション開発に期待
 ファイバ化ゲノムDNA単分子解析は,スライドグラス上などでゲノムDNAを1本のファイバにして,高分解能で遺伝子配列を可視化したり,物理的な長さを測定する手法(関連記事)。FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)法やエピジェネティック解析(ゲノム配列の変化を伴わない遺伝子発現の制御を解析)への応用が期待されている。しかし,ファイバ化の過程でDNAが絡んだり,一部がコイル状態になってしまうことが多く,アプリケーション開発の妨げとなっていた。解析しやすいようにDNAをほどいたり,引き伸ばす必要があるが,DNAは直径2nmと非常に細く長い物質であるため,その過程で切れてしまうことが多かった。
 これまでDNAを操作する技術として,マイクロマニピュレーターや光ピンセットによる方法が考案されてきた。しかし,前者は物理的にDNAをつかむためソフトな操作が難しく,DNAが断片化してしまうことが多い。後者はDNA末端にマイクロビーズを化学修飾する必要がある。さらに,マイクロビーズを結合しているDNA末端付近しか操作できないため,数10μm以上のDNAを取り扱うのは難しかった。

マイクロフックとマイクロボビンがDNAを引っ掛けて巻き取る
 そこで小穴氏らは,新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,ゲノムDNAを個別操作する技術を開発,約10μm×5μm×5μmの2種類の微小構造体を駆使し,ゲノムDNAを自在に操作する方法を確立した。この微小構造体を用いることで,全長約1.9mmの酵母の染色体DNAの任意の場所にアクセスし,断片化せずに引き伸ばしたり,巻き取ったりできることを確認した。化学修飾などの前処理なしにゲノムDNAを丸ごと1本操作することが可能になる。
 具体的には,フォトレジスト(感光性樹脂)で作製した(1)マイクロフック(2)マイクロボビン,の2種類(図1)の構造体を光ピンセットで操作して,ゲノムDNAを捕捉・操作していく。(1)マイクロフックは,DNAをフックで引っ掛けて,DNAの形態を制御する。束になっているDNAから1本だけを引き離したり,コイル状態のDNAを引き伸ばすなどの操作を可能にする(図2)。(2)マイクロボビンは,2本用いることでDNAを巻き取っていく。片方のマイクロボビンの周りで,もう一方のマイクロボビンを衛星のように周回させることによりDNAを巻き取る。巻き取ったDNAは,そのままの状態で別の場所に移動し,巻き取る時とは逆回りにマイクロボビンを周回することで再びファイバ化状態の戻すことが可能だと言う。「将来的にはゲノムDNAの抽出から解析までチップ上で行う『オンチップ染色体DNA単分子解析システム』の1モジュールとして応用していく」(小穴氏)方針である。

(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)


図1:マイクロフック(左)とマイクロボビン(右)のイメージ図
マイクロフック(左)とマイクロボビン(右)のイメージ図

図2:束になったDNAから1本だけ引き出している様子
束になったDNAから1本だけ引き出している様子



【ニュースリリースはこちら】
  ・顕微鏡のステージ上,溶液中でファイバー化ゲノムDNAを個別操作する技術を開発 [2007年02月05日]


記事要点掲載先:日経BP.net


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