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中空光ファイバで長波長レーザーを伝送,東北大
内視鏡レーザー治療装置の小型化・高精度化を可能に
[2007/03/06]


 泌尿器科で使用される内視鏡レーザー治療装置を,東北大学大学院工学研究科助教授の松浦祐司氏の研究グループが,ガラス管の中を空洞にしたファイバ「中空光ファイバ」を使って試作した(写真1)。中空光ファイバは直径約0.5mmの中空管で,これまでの光ファイバでは難しかった波長3μmの長波長レーザー光を伝送できる。この波長のレーザー光は,結石や生体組織に強く吸収されるため,試作した内視鏡レーザー治療装置には,

  (1)必要なレーザー出力を低減できる
  (2)患部のみを高精度に照射できる

 という特徴がある。具体的には,従来の装置の約1/5のレーザー出力で同程度の治療効果を発揮する。この結果,装置の大きさは約1/2に,価格は約1/3にできると言う。泌尿器科における結石粉砕や前立腺肥大症治療などへの応用が期待される。

写真1:中空光ファイバを用いた内視鏡レーザー治療装置の試作機
中空光ファイバを用いた内視鏡レーザー治療装置の試作機

エルビウムYAGレーザーを通す中空光ファイバを開発
 研究グループは,波長3μmのエルビウムYAGレーザーを採用している。このレーザーは,水分に対する被吸収率が高く,一定方向に照射できるため,切れ味鋭く(写真2左),少ないレーザー出力で患部のみを治療できる。
 しかし,これまでエルビウムYAGレーザーを効率的に伝送できる光ファイバはなかった。このため,従来の内視鏡レーザー治療装置は,石英ガラス・ファイバに波長2μmのホルミウムYAGレーザーを伝送していた。ただ,ホルミウムYAGレーザーは,(エルビウムYAGレーザーと比べると)水分に対する被吸収率が低く,レーザー光が組織の深くまで浸透し,分散する。そのため,切れ味が鈍く(写真2右),患部周囲の健常組織を傷つけてしまうことがあった。また,治療効果を高めるためには,大きいレーザー出力が必要となり,装置の大型化・高価格化を招いていた。石英以外のガラスや結晶を対象に,エルビウムYAGレーザーを伝送する光ファイバーの開発が進められているが,実用化には至っていない。
 そこで研究グループでは,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,「パイプの中に光を通すイメージ」(松浦氏)でエルビウムYAGレーザーを通す新たな光ファイバーを開発した。具体的には,直径0.5mmの石英ガラスを空洞にし,内面に銀とポリマー(環状オレフィン)の薄膜を2重にコーティング,レーザー光の反射率を最適化した。「ガラス管のままだと光が反射せずに外に漏れ出るので,光ファイバーとして機能しない。銀とポリマーの膜厚を調整することで,直径0.5mmを維持しながら,ガラス並にツルツルで,金属並に光を反射する内面を持つ中空光ファイバを作った」(松浦氏)と話す。

写真2:エルビウムYAGレーザーとホルミウムYAGレーザーの照射
エルビウムYAGレーザーとホルミウムYAGレーザーの照射

従来の約1/5のレーザーパワーで結石を粉砕
 この中空光ファイバにより,エルビウムYAGレーザーの伝送が可能になる。開発した中空光ファイバーを直径2mmの内視鏡に入れた試作機の治療効果を,in vitro(試験管内など人工的に構成された環境)で検証した結果,約1cmの結石を10分で約2mmに粉砕できたと言う(写真3)。必要なレーザー出力は2〜4wで,10〜20wのホルミウムYAGレーザーの約1/5に抑えられる。レーザー出力部は約1/2に小型化が可能だ。
 「中空光ファイバはエルビウムYAGレーザーを伝送し,効率的に結石を粉砕することを確認した。必要なレーザー出力を大きく低減するだけでなく,不要なレーザー光の照射を抑えるので,患部のみを効果的に治療できる。さらに中空光ファイバは,止血効果が高いホルミウムYAGレーザーやネオジウムYAGレーザー(波長1μm)などとの組み合わせが可能である。今後,止血をしながら組織を切開するなど,さまざまな治療へ応用していきたい」(松浦氏)と意気込みを語る。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)

写真3:結石の粉砕
結石の粉砕


【ニュースリリースはこちら】
  ・小型・低価格化が可能な泌尿器科用内視鏡レーザー治療装置の開発に成功 [2007年01月25日]
【テクニカルノートはこちら】
  東北大学大学院工学研究科からの提案
・中空光ファイバーを用いた泌尿器科用内視鏡レーザー治療装置実用化開発に関する医工連携研究の提案 [2007年01月25日]


記事要点掲載先:日経BP.netBiotechnology Japan


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