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インフルエンザ経鼻ワクチンの開発を目指し,
徳島大学などが抗体産生誘導効果を調べる臨床研究を開始



[2007/01/24]

 ワクチンを鼻に噴霧してインフルエンザウイルスの感染を予防する経鼻ワクチンの開発を進める徳島大学分子酵素学研究センター教授の木戸 博氏は,開発に必要な基礎データを集める臨床研究に着手した。2006年度は,徳島大学医学部付属病院,小田耳鼻咽喉科(岩手県),永寿総合病院(東京都),松永病院(大阪府)などと共同で,インフルエンザワクチンの抗体産生誘導効果を調べる。

 現在のインフルエンザワクチンは皮下もしくは筋肉注射で接種し,主に血液中の抗体を産生誘導する。そのため,ワクチンの有効性や用量は,血液における抗体のウイルス中和活性価(ウイルスを死滅させる力)を基準に評価・設定している。 これに対し,同氏が開発を進めるワクチンは鼻に噴霧し,気道粘膜にて抗体を産生誘導する。この有効性や用量を評価するためには,血液だけでなく,気道粘膜における抗体のウイルス中和活性価を基準にする必要がある。しかし,その基準値は国際的にも明確になっていない。
 そこで,今回の臨床研究では,経鼻ワクチンの有効性や用量を定量的に検証するために必要な基礎データを集める。具体的には,現在広く使用されている皮下ワクチンの接種前後およびインフルエンザに自然感染した際の鼻汁と血液における抗インフルエンザ抗体を測定する。期間は,2006年度から4年間の予定である。2006年度は約200名の被験者を対象にし,2007年度以降は,さらに被験者を拡大する計画を立てている。

抗体価を基礎データにして新規ワクチンの有効性・用量を検証
 今回の臨床研究は,インフルエンザ感染者と非感染者の2群に被験者を分けて,抗体の強さの指標となる抗体価を測定・比較する。対象とする抗体はIgAおよびIgGである。抗体価の測定は,ワクチン接種直前,接種4週間後,インフルエンザ流行終了期(2月末を予定)の計3回行う。また任意で4月末と,感染者に限り,インフルエンザ確定診断時と完治時に測定する予定である。 現在のインフルエンザワクチンは,血液中の抗原特異的IgGを上昇させるが,気道粘膜のIgAは上昇させにくい。一方,ウイルス感染後は,気道粘膜のIgAの抗体価を上昇させてウイルスを排除していると言われている(図1)。しかし,こうした抗体価の上昇率をヒトを対象に定量的かつ経時的に調べた研究はなく,今回の臨床研究ではそれを明らかにする。「今までは,ワクチン接種やウイルス感染が,鼻腔や気管でどの程度抗体価を上昇させているのか,分かっていなかった。臨床研究を通じて,感染者と非感染者の抗体価を比較することができれば,ウイルスの初期感染や予防,排除に必要な抗体価や中和活性価を検証できる。それをコントロールデータとして,開発中の粘膜免疫ワクチンの有効性を評価し,用量を設定していく」(木戸氏)と言う。

図1:インフルエンザに感染した小児の鼻汁におけるIgAの産生レベル
インフルエンザに感染した小児の鼻汁におけるIgAの産生レベル

ウイルスの初期感染を防ぐ粘膜免疫ワクチン
 木戸氏が,粘膜免疫ワクチンの開発に注力するのは,インフルエンザウイルスは気道の粘膜を介して感染するからだ。「現在の注射ワクチンは重症化を防ぐことはできるが,初期感染を防ぐことは難しい」(木戸氏)のが現状だ。
 そこで同氏は,気道粘膜の免疫法の確立を目指し,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO技術開発機構)の助成を受け,アジュバント(抗原薬物ヴィークル)の開発などを進めている。具体的には,ワクチン抗原やDNA,その他の薬剤を効果的に気道の標的細胞に運搬するヴィークルを開発している。
 インフルエンザ経鼻ワクチンの開発では,アジュバントとして肺の界面活性成分である肺サーファクタントに注目,実用化研究を進めている。実際,ワクチンに人工的に成分調整した肺サーファクタントを加えてミニブタに点鼻投与したところ,鼻汁および血液におけるIgAおよびIgGの上昇を確認し,抗原薬物ヴィークルとしての作用を認めている。今回の臨床研究で得られた基礎データは,このミニブタの成果をヒトで実証するためのエビデンスとして利用する。
 同氏は,この他にも,マクロライド系抗生物質であるクラリスロマイシンの粘膜免疫増強機能を明らかにするなど,粘膜免疫の研究を積極的に進めている。2007年1月6日に大正富山医薬品が開催したインフルエンザ関連シンポジウムでは,同薬剤の粘膜免疫機構として,気道粘膜におけるIgAの誘導および繊毛運動の維持という観点から成果を公表した。
(テクノアソシエーツ 笹木雄剛)



記事要点掲載先:日経BPBiotechnology Japan

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